前ページからの続きです。
3. 入試の比較
最後に中学入試の比較です。
偏差値の推移
入手できている2009年以降の四谷大塚50偏差値を使います。ちなみに50偏差値表を見るのは、過去記事(50%偏差値表って何に使うの?)で書きましたが、50%偏差値が合否ラインになっていて難易度をより正しく表していると考えているためです。
今回は線が多すぎて見づらいので、第1回入試と第2回入試を分けて出します。また入試変更があった年については*を表示してあります。
全体的には似たような線を描いているように見えますが、個別にコメントするとこんな感じですかね。
- かつてトップレベルだったお茶女大が直近で急降下している
- ここ数年で洗足学園①(緑)が急上昇しフェリスと並んだ
- 鷗友学園①は2016年の定員増加でやや下がっていたが、直近では上昇傾向
- 吉祥女子①は2021年の定員増加後も大きく上昇している
続いて第2回以降です。
こちらはより似たような動きをしている学校が多い印象です。その中でも気になったのは次ですかね。
- 洗足学園②と鷗友学園②が共にじわじわと上昇を続けている
- 浦和明の星②はかつてはこの中では上位だったが、他校に抜かされていったイメージ
入試問題のポイント
続いて入試問題の違いについてです。これは四谷大塚中学案内に掲載されている情報を参照します。基本的には前年度の入試問題分析ですが、学校の傾向としてポイントだと思われるところにアンダーラインを引いておきます。
算数 | 国語 | 理科 | 社会 | |
---|---|---|---|---|
フェリス女学院 | 今年は例年以上にひねりが加えられた問題が 多かった。年によって難度が上下するが、今 年のような難度は例外と考えていいだろう。 難問ばかりを意識するのではなく、まずは基 礎基本を固め、典型題は必ず正解することを 目標としよう。その上で、さらに深い理解と 応用力を身につけることを意識した学習に取 り組みたい。幅広い領域から出題されるので、 苦手分野を作らないことが大切。 | 文の要素に関する問題が短文作りに変わった が、全体的にほぼ例年通り。文章総字数はこ こ3年8,500字前後だったが、約9,400字と 長くなり、問題数も多いのでスピード感を 持った正確な読解力と処理能力が必要。社会 との関わりをテーマとした説明文を読んで、 自分の意見をまとめる定番の問題もあった。 | 例年4分野から出題。今年度は生物は動物・ 植物の分類、化学は燃料の燃焼、物理は空気 ・水の温度による体積変化、地学は太陽の日 周・年周運動の大問4題。難問は少ないが、 小問数が多く、表やグラフから答えを導き出 すデータの正確な分析力、字数制限無しの記 述問題12問等を短時間で仕上げる能力が要求 される。 | 大問4題構成。総設問数39問。地理・歴史・ 政治の出題分野割合昨年とほぼ同じ。記述問 題は5問、短文で難易度は高くないが、全体 に占める比率は高いので対策が必要。基礎・ 基本を錬成し、定着を図るとともに、表面的 な知識にとどまらない、できごとの背景や原 因などにもふれた、深い理解が求められる。 |
洗足学園 | 計算問題2問、一行問題8問、大問2題の問 題構成。基本~やや応用レベルの問題が出題 される。大問では、グラフを用いた問題や規 則性の問題は頻出なので対策が必要。また、 式や考え方を書かせる問題が出題されるので、 丁寧に素早く式を書く練習をしておくこと。 | 説明文と物語文の読解2題(植物の名を使っ た慣用表現と書き取りで計10問の言語事項を 含む)という例年通りの出題。説明文はAIと の共存について言いかえ・比較・内容合致な どを通じて筆者の考えとその根拠を、物語文 は人物の様子・心情とその理由を中心に、多 くは記述で解答を求められた。 | 大問4題で各分野から概ね1題ずつ出題。物 理分野は光と色、化学分野は浸透と水溶液、 生物分野は植物の生長、地学分野は地震が出 題された。記述も計算問題もあるが、設問数 は標準的であり、答えやすい問題も多い。ひ とつひとつ確実に解いて、ミスは極力少なく したい。 | 例年通り、地理・歴史・政治の大問3題構成 で、配点も3分の1ずつである。記述問題が それぞれの分野から2行の分量で出題される ことも変わらない。基礎基本の出題が多い一 方、ミレニアム開発目標(MDGs)についての 出題もみられるなど、現代社会への幅広い関 心も問われている。 |
鷗友学園 | 計算問題が2問、大問が6題程度の問題構成。 幅広い分野から標準レベルの問題が中心だが、 やや難しい問題が出題されることもある。平 面図形(相似)やグラフ絡みの問題は頻出な ので、しっかりと対策しておきたい。問題用 紙と解答用紙が一体になっているので、丁寧 に式を書く習慣を身につけよう。 | 長めの物語文と短めの説明文の読解2題(全 問すべて記述)と書き取り5問は例年通り。 物語文では場面と人物の心情の変化に行動の 具体的な目的を、説明文は言いかえ部分に注 意しながら文脈に沿い、筆者の考えと理由へ のを理解度を問われた。学校側が示す解答例 を参考に記述力をつけたい。 | 大問4題で各分野から1題ずつ出題。物理は 電熱線の発熱、化学はものの燃焼、生物は呼 吸のはたらき、地学はいろいろな天体が出題 された。試験時間は45分と長めであるが、記 述が9問あり、時間のゆとりはあまりない。 問題文をしっかり読み、キーワードを見抜い て実験結果等と照らし合わせていく練習が必 要。 | 配点の約3割は記述問題。用語や理由の説明 を一行程度で答えるものや、地図やグラフを 読み取って説明するもの、社会問題の解決に ついて自分の考えを述べるものなど多様。事 象や用語の暗記のほかに、論理的に説明でき るように深く理解すること。過去問演習を多 くこなし、記述問題の解き方に慣れること。 |
雙葉 | 今年から問題と解答用紙が別紙になったが、 出題傾向や設問数(総設問数12問)、難度に 大きな変化はない。計算量が多いが素直に解 き進められる問題が中心で、計算ミスと規則 性の処理が合否を左右する雙葉らしい問題。 計算のスピードと正確さの強化、細かい条件 整理をあわてずに行う練習はもちろんのこと、 普段から式・考え方をしっかりと書く習慣を 身につけて欲しい。 | 説明文、物語文、漢字の読み書き10問という 構成。際立った難問はなかった。設問形式は 記述中心で、字数制限のないものなど、長短 合わせて12問出題された。文章を正確に読み 取れるように豊富な「語彙力」と「読解力」 をつけておくこと。雙葉の記述は、ほとんど 字数制限がないので、どのくらい書けばいい のかを自分で決めなければならない。 | 大設問4題で4分野から各1題ずつの出題。 小設問数は37問と例年通りで、作図や途中式 を書かせる計算問題はなかったものの、記述 問題は多く問われた。近年は時事問題をテー マにする問題が多く、その傾向は続いた。文 章や表・グラフを正確に読み取ることができ ないと得点できない問題が多いが、今年はそ ういった問題は多くなく、受験生にとって馴 染みある問題も散見された。近年傾向が少し ずつ変化してきているのかもしれない。 | 例年と同じ大問3題の構成で、小問数は例年 並みに戻り40問。大問ごとに地理・歴史・政 治の区別が比較的はっきりしている。2行ほ どで解答させる記述問題が大問ごとに1問ず つ出題。解答の方針を見定めやすい内容なの で『四科のまとめ』を利用した対策が可能。 年代の並べかえに関する出題が5問と多かっ た。重要な年代はしっかりおさえておきたい。 選択肢に特徴があるので、過去問演習を行い、 慣れておくとよい。語句を「何となく」覚え ている程度ではなく、基礎・基本の徹底と背 景の理解が必要。 |
白百合学園 | 計算問題の出題がない大問5題の構成。考え 方や式を要求される問題が多く、試験時間 は40分と短いので、手際よく問題を処理して いく力が必要となる。割合や図形の問題は頻 出。後半の大問は難易度も高く、問題も複雑 になるので、前半の問題で確実に得点してお きたい。 | 説明文と物語文の共に短めの読解2題(書き 取りや慣用句など数問を含む)で、解答形式 は記号選択・抜き出しと記述(5問計250字 )。丁度良い問題の難度と試験時間(40分) だ。説明文は要点と内容合致から筆者の考え を、物語文は様子や言動の意味・心情を中心 に問われた。 | 大問5題。物理分野のみ2題、他分野は各1 題の出題。物理は2題とも電流の問題、化学 はアルコールの燃焼、地学は火山、生物は生 物の分類が出題された。例年グラフを書く問 題や計算問題、記述など多岐にわたる。試験 時間内に問題を解く練習は必須。 | 大問3題構成。用語記述の割合が高く、漢字 で正しく書くことが必要。記号選択は歴史で 年代のならべかえが例年複数出題されている。 30分の試験時間に対して小問数が多いので、 処理能力とスピードが求められる。 |
吉祥女子 | 計算2問、一行問題5問、大問4題の問題構 成。一行問題はオーソドックスではあるが解 きやすいものではないので、計算力と基礎力 を十分に養っておく必要がある。大問は思考 力を必要とする問題が出題されるが、設問が 誘導になっているので、流れを追って題意を 読み解いていこう。 | 物語文とやや長めの説明文と説明文の読解2 題と書き取り数問という問題構成。物語文は 場面・様子の意味や人物の心情とその理由を、 説明文は主に言いかえ内容を確認して筆者の 考えとその根拠を問われた。100字を越える 最後の記述は問題意識を持って書くことが大 事だ。 | 大問4題で各分野から1題出題。地学分野は 太陽の動き、生物分野は小笠原をテーマに植 物の問題、化学分野は混合物の分離、物理分 野は浮力が出題された。例年通り20ページと いうボリュームに圧倒されるが、過去問を充 分に解き、時間配分も含めて練習を積み重ね、 対応できるようにしたい。 | 大問3題構成。例年、問題文と小問の文がい ずれも長いため、時間をかけずに読む演習も 行いたい。用語記述は原則として漢字指定。 例年同様、難易度はさほど高くなく、基本問 題が中心。統計資料などにあまり見慣れない ものが見受けられるが、問題文中から手がか りを見つけることができる場合もある。 |
浦和明の星 | 例年、計算と一行問題が7問程度、大問4題 程度という問題構成。大問は標準レベルの問 題中心だが、文章が長く、図や式に整理して 考える力が必要。日々の学習では、計算・作 業のスピードと正確さの向上を意識しよう。 速さや条件整理の問題が頻出なので、しっか りと対策をしておくこと。 | 説明文・長めの物語文・コラム(「折々のこ とば」)の読解3題(読み書き数問を含む)。 説明文は要点と言いかえ内容(=例・外来語 ・表現)を通して筆者の考えを、物語文は人 物の様子や心情とその変化のほか比喩も問わ れた。解答形式はほとんどが記号選択か抜き 出しだ。 | 4分野から均等に1題ずつ出題された。物理 は気体の体積、化学は物質の分類、生物は野 鳥、地学は太陽の動きが出題されており、各 問の難易度も高い。試験時間は25分だが、記 号で答える問題が多いので、過去問等で練習 を積んで対応できるようにしたい。 | 例年記号選択の比率が高い。高度な知識を必 要とする問題もあるが、多くは基礎基本で合 格者平均の正答率は高く、取りこぼしは禁物。 近年、都市に関する問いに加え、都道府県の 特色をきく問題もめだつ。理社2教科で50分 という形式となので、原則社会→理科の順番 で解くことを徹底する。 |
頌栄女子学院 | 計算+一行問題6問程度、大問4題の問題構 成。前半は幅広い分野から出題される。図形 や条件整理など思考力を必要とする問題も見 られるので、時間配分に注意しながら取り組 むことが大切。考え方や求め方を書かせる問 題もあるので、日頃から丁寧に書くことを心 掛けておこう。 | 説明文と物語文の読解2題と書き取り5問が 出題された。説明文は文章の性質上言いかえ 内容を探して筆者の考えを問うものばかり だった。物語文は人物の様子・言動の心情と その理由を字数指定なしで問うものが多かっ た。良い答案を書くために出題の意図をよく 理解すること。 | 大問4題で4分野から均等に出題。化学分野 は水溶液の分類、生物分野は呼吸と血液循環、 地学分野は温室効果、物理分野は電流と回路 ・発熱がそれぞれ出題された。理科も含めて 4教科とも100点満点のため、ある程度得点 できないと他教科の負担が大きくなる。取れ るところはしっかり取っていこう。 | 例年、基礎知識を問う問題が多く、出題形式 もほぼ同じ。記述問題は、基礎的な知識をど のように活用するかを問う、やや発展的な内 容のものが多い。時事問題の出題が多く、日 ごろからニュースや世の中のできごとに耳を 傾けることが求められている。 |
ここから読み取れる傾向をざっくりまとめるとこんな感じですかね。
- フェリス:全体的に問題数が多くスピードが必要
- 洗足学園:算数の途中式や記述問題など書かせる問題が多め
- 鷗友学園:全教科とも記述型
- 雙葉:全教科とも記述型
- 白百合:標準的な形式で試験時間は短め
- 吉祥女子:標準的な形式だが文章が長め
- 浦和明の星:記号選択問題が中心
- 頌栄女子:標準的な形式・難易度
洗足・鷗友・雙葉が記述型ですかね。逆に浦和明の星は1月校で受験者数も多いので記号問題がメインのようです。ただ、実際に問題を確認しておらず認識が間違っているかもしれないので、詳しくはそれぞれの学校の欄を確認してください。
4. まとめ
以上、女子のY偏差値60代グループをまとめました。何かの気付きになったり判断材料になるものが少しでもあればと思います。
それぞれの学校ごとにまとめたこちらもぜひご覧ください。
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