慶應義塾大学の附属校を深掘りします。慶應は小・中・高と学校が別々に分かれていて、それぞれの段階の進学先も複雑に入り組んでいます。しかも幼稚舎が小学校だったりと紛らわしい名前もあるので、素人には(?)分かりづらく、その辺りを全体像として解き明かしていきたいと思います。
学校案内的な内容にも多少触れますが、それよりも敢えて入学定員や進学先といった数字を追いかけることにフォーカスすることによって、慶應義塾大学への入学ルートの全体像を把握し、現実的に小学校・中学・高校・大学受験の戦略を考える材料になればと思っています。
親世代よりも受験事情は複雑になってきているので、大学受験までの受験全体の大きな流れを見るのにも活用していただけるかと思います。
大学定員と内部進学の全体像
大学入学定員の全体像
まずは慶應義塾大学の入学定員についてざっと一覧にします。
まず定員ベースの割合で、外部入試は77%・内部進学が23%です。要するに内部進学割合は1/4弱ということになります。そして従来型の学力試験である一般選抜は57%と、6割を切るところまで縮小しています。グラフにするとこんな感じです。
内部進学枠の大きい学部は経済学部(44%)・法学部(30%)・医学部(40%)・看護医療学部(30%)といったあたりです。慶應の看板学部とも言われる経済学部や、私大医学部最難関とされる医学部で内部進学が多いというのはおさえておいた方が良い視点かもしれません。
文系・理系で分けてみるとこんな感じです。
そもそも文系の定員が多いのですが、それを踏まえても文系の内部進学枠が多いというのは言えそうです。
そして、文系・理系学部では学校推薦型(いわゆる指定校推薦)がそこそこあり、文系の一部学部と湘南藤沢の2学部では総合型選抜が行われているため、一般選抜は文系・文理融合型学部で半分程度、理系学部で7割程度になります。
ちなみに一般選抜の少ない学部は、法学部(38%)・経済学部(50%)・総合政策学部(53%)・環境情報学部(53%)あ辺りが挙げられます。
今後どう進んでいくのかはわかりませんが、世の中全体の空気感として学力試験から脱却していこうという流れがあることを念頭におくと、一般選抜の枠はさらに縮小してもおかしくないかもしれません。
以上が大学入試における現状認識です。
これを踏まえ、入学者の1/4弱を占めることになる内部進学ルートについて深掘りしていきましょう。
2025年度から経済学部で学校推薦型(いわゆる指定校推薦)導入という発表をうけて、「ついに慶應経済も推薦導入!」とか「一般入試枠が減る」「中学受験がさらに過熱」みたいな報道を目にしましたが、上の表を見ていただければ僅かな動きだとわかります。もちろん方向性としてそっち側に動いていることは確かですが、一気に半減とかいう舵の切り方ではないので、煽り文句に乗せられないよう冷静に数字を見てほしいと思います。
内部進学ルートの全体像
慶應義塾の系列校は小中高ごとに複数あります。
- 高校
- 慶應義塾高校(塾高)
- 慶應義塾志木高校(志木高)
- 慶應義塾女子高校(女子高)
- 湘南藤沢高等部(湘南藤沢/SFC)
- 慶應義塾ニューヨーク学院
- 中学校
- 普通部
- 中等部
- 湘南藤沢中等部(湘南藤沢/SFC)
- 小学校
- 幼稚舎
- 横浜初等部
進学先がやや複雑なので、それぞれの進学人数も加味して、大学までの内部進学ルートを図にしてみます。矢印の太さは人数を表現しています。
ざっくり言葉にまとめます。
細かく言えばこの矢印以外のルート(幼稚舎から湘南藤沢中等部など)もわずかにありますが、中等部のサイトに「2024年度より湘南藤沢高等部への内部進学はできなくなる」との記載もあり、原則的な進学ルートは上の図のイメージになると考えられます。
男子校の塾高・志木高の高校入試枠が大きいので、男子は高校受験が最も間口が大きくなっています。一方で女子については女子高の枠が小さく、さらに共学の中等部・幼稚舎でも女子枠が半分だったりするので、どの段階から狙うにしても女子には相当厳しいと言えます。
とりあえず慶應ならどの学校でもいい!というコスパだけで考えるなら、男子限定で高校受験が良いと言えなくはないと思いますが、そんな視点だけで学校選びをするのもつまらないので、この先はもう少し各学校を深掘りして見ていこうと思います。
各系列校からの進学先割合
細かなデータはそれぞれの学校ごとに見ていくとして、まずどの学部への進学が多いのかを割合で見ておきたいと思います。
医学部・経済学部・法学部が毎年最大値となっていてほぼ固定、あとは年により上下があります。この傾向は4校全てに当てはまります。円グラフにしてみます。
経済学部と法学部で2/3近くとなり、ここがメインの進学先(皆が目指す学部?)と言えるでしょう。
商学部まで入れると塾高・志木高では3/4が文系学部となり、理系熱はあまり高くないように見えます。逆の視点では、理系学部には入りやすいとも言えるかもしれません(医学部を除く)。
医学部は上位3%に入らないと厳しい感じです。塾高には22名の枠がありますが、そもそも母集団が大きいのと、幼稚舎・普通部・中等部からの内部進学者は基本的に塾高に上がるので、教育熱心な家庭の超優秀層はそれなりにいることを踏まえると、狭き門であることに変わりはないと思います。外部受験生の結果も公開している女子高では他大の医学部を受験し進学する子も一定数いることからも、医学部の内部推薦のハードルが高いことが伺えます。
次ページからは各学校を深掘りしていきます。
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