【2024入試】2月入試志願者数の振り返り

2月入試の結果分析 入試データの分析

2024年の中学入試を数字で振り返りたいと思います。まずは、数字の出揃った出願者数について一覧で見ていきます。

この先、2024年入試がどうだったかという情報を多数目にすると思いますが、その際に、誰かの言った話を鵜呑みするのではなく、まずは自分自身でデータを見て考えてみる方が良いと思っているので、そのための情報をご提供したいと思います。私の考察も好き勝手に書きますが、それはひとつの見方として、データの方を重視して見てもらえればと思います。各塾の入試分析会の予約も始まっていますが、事前に自分で考えた上で話を聞きにいくと情報の解像度が全く違ってくるので、ぜひおすすめしたいです。

と書き始めたところだいぶ大作になりそうな雰囲気になったので、日程ごとにページングして公開していきます。後半日程の分も順次追加(更新)していくので、後日再度アクセスしていただければと思います。
【2/10更新:全ての入試分の更新が完了しました】

なお、全てのデータは市進中学受験情報ナビのものを使用しています。

〜データの見方〜
- 日程別に過去5年間の最終出願者数を一覧化しています。
- 過去5年間の平均値より多い場合は赤字・少ない場合は青字で表しています。
- 共学校で男女別判定されている場合は、男子と女子のリストへ入れています。
- 共学校で男女混合定員の場合は、男女合計での数値を使用しています。
- 四谷大塚偏差値50以上の入試回でリスト化しています(共学校で男女どちらかが50を下回っている場合は除外)
- 見やすさのため四谷大塚80偏差値順に並べています。
*データに誤りがある可能性もあるので、間違いを見つけた場合はお知らせいただけると幸いです。
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2月1日午前入試

弱気だとか言われているが…

どこかのメディアで、2024年入試組のことを”弱気な学年“などと呼んでいましたが、ずいぶんと失礼な名前を付けるものだなと思いました(腹立たしいのでリンクは貼りません)。

そこでは理由として偏差値60以上の難関・上位校が志願者数を減らしているからとしていましたが、その根拠となる数字は明確に示されていません。開成・麻布・武蔵といういわゆる男子御三家は確かに減少ですが、駒東・早稲田・渋渋は増加しているし(記事でも触れられています)、女子も比較的安定と書かれているので、要するに男子御三家が減ったことを取り上げて、”弱気だ”という印象論で語っているに過ぎないと感じます。

具体的な数字を見れば開成の減少は大きくはないし、ここ何年かで見ても大きく減ったと言えるのは麻布と武蔵くらいです。それもたまたま今年は同レベル帯の他校に流れただけであって、受験生全体の動きとして、弱気だとか安全志向だとか言うのは違うだろうと思います。敢えて言うなら、昔のようにブランドや偏差値の上下だけで学校選びする時代ではなくなったという話じゃないでしょうか。まあキャッチーな言葉を付けて煽るのが仕事だと言えばそうなのかもしれませんが、見る側は踊らされないように正しく情報を得ることに気をつけたいです。

前振りが長くなってしまいましたが、せっかくなのでこちらもタイトルをつけながら見ていくことにしてみます。

男子は揺り戻しがテーマか

男子の上位校は東大合格者数で上下することが多いですが、今年もそれが素直に反映されたものと見ていいと思います。それ以外は、ここ数年の動きの揺り戻しというのが自分はしっくりきます。それを踏まえて一覧をご覧ください。

上位校での大きな動きは渋渋・駒東・早稲田の増加ですが、これは完全に東大合格者数の増加で説明がつきます。最近は特に現役合格が重視されるようになっていますが、2023年の実績で目立っていたのがこの3校でした。個人的に注目しているのは渋渋で、ここは男子の第1回だけ難易度が1ランク下がるイメージだったのが、最難関として認識されるようになるのかに興味があります。そこも今年の東大実績次第かもしれません。駒東・早稲田については、最近ちょっと下げていたところから、やはり東大実績を踏まえてのV字回復というイメージを持ちました。

そしてこの3校の煽りを受けたのが麻布・武蔵・海城だと考えられます。特に麻布は駒東と逆相関することが多いので、今年は駒東に移動した可能性が高く、さらに渋渋が人気化したことでの大幅減なのかなと解釈しています。武蔵はここ数年で復活したと言われ偏差値も上昇してきたので、上の3校の動きとも重なって、上昇一服とかやや踊り場といったイメージかと思います。海城は昨年が大幅増で倍率も偏差値もだいぶ上がってしまったので、今年はその反動減と考えられます。あとは2023年の東大合格者数があまり奮わなかったことも一因と個人的には見ています(実はその分医学部が増えていたのですが、何だかんだ言っても人気のバロメータはやはり東大なんだなというのを再確認できました)。

早稲田系は3校とも2月1日が試験日で、ここは増加と減少がハッキリ分かれました。このうち早大学院早稲田実業の2校は逆相関していて、早稲田実業に人が集まった年は早大学院が減るという動きが確認できます。地理的には早大学院と早稲田中も関係しそうな気もしますが、早稲田中は進学校なので、学校のタイプから基本的には関係ないと考えています。(ただ、入学後の生活にまで思い至らない人が多い場合は、ここも影響し合っている可能性はありますかね)

その次は東京と神奈川に分けて考えます。東京で増加したのは、芝・城北・攻玉社・巣鴨・高輪・成城の6校でした。はここ5年ずっと増加を続けていますが、それ以前は600名を超えていたこともあるので、上昇や過熱というより売られ過ぎから元に戻ってきたと考えた方がしっくりきます。城北は安定した動き、攻玉社は400名を挟んで前年減からの反動増というイメージ、成城もまあ安定と言っていいのではないでしょうか。巣鴨は年や日程による増減が激しい感じですが、2020年は午後入試導入からの爆増年だったので、そこからやや落ち着いてのこの数字かなと思います。高輪は大幅増加ですが、これは数年来ゼロだった東大合格者が、昨年・一昨年と2年連続で出たことが要因だと見ています。

一方で減少したのは本郷・世田谷学園・桐朋・都市大付・成蹊・日本学園の6校です。本郷はこのところ倍率も偏差値も上昇傾向にありましたが、昨年ちょっと増え過ぎた感があるのでその反動と見ていいでしょう。ちなみに来年に向けては今回の大学合格実績が注目されると思います(高校入試がなくなり中入生のみになった学年の卒業年度にあたるため)。桐朋はまあ安定、世田谷学園は入試制度を色々触ってきましたがこの辺りで安定しそうな雰囲気、都市大付もこの人数くらいが定位置になりそうですかね。都市大付は倍々ゲームで伸びてきた大学合格実績が止まったことで、どこまで伸びるかという期待で買われていた部分がなくなったので、そろそろ落ち着くような気がします。成蹊は安定だったところからやや下げ基調に見えるのが気になるところ、日本学園は前年あまりにも高倍率だったことによる反動減だと考えられます。

神奈川については、まず慶応普通部が前年の減少からさらに減少ということで、数年前から見るとだいぶ緩和に見えます。慶應義塾高校の甲子園出場効果は特になかったようです。次がサレジオ学院の増加と逗子開成の減少ですが、数年で均せば横ばいなので、ここは前年からの反動という見方で良いと思います。そして明らかに大きな増加と言えるのが鎌倉学園ですが、特に大きなニュースも見当たらないのでこれは正直よくわかりません。1日午後の算数入試は逆に半減とも言えそうな大きなマイナスなので、午後から午前へシフトしたのかな?とも思えますがどうなんでしょう。

最後、一番下の欄に、ここまでの学校の合計数も出しています(一部共学校も混ざった数字ですが)。偏差値50以上が今回の集計対象ですが、そこで見ると、2023年に一気に1000以上増えて12000人を超えています。これは日本学園と都市大付①の増加分で7割方説明がつく感じですが、それ以上に数字は増えているので、共学から男子校への流入分と考えていいかと思います。2024年も若干減少ですがその流れは継続していて、過去5年でも2023年に次ぐ数字を維持している感じです。

偏差値63で一旦ラインを切って集計もしてみましたが、ここで見ると減少幅は少し大きく、ほぼ2021年・22年と同程度の数字になります。偏差値をモノサシとして強気・弱気を判断するなら、確かに弱気と言えなくもない数字ではありますかね。個人的にそういう見方は嫌いですが。

女子は上位校志願者が減った

女子はパッと見でも前年比マイナスが多い印象ですが、それ以上に、過去5年で見ても少なめ(青字)のところが多いというのが率直な感想です。合計数を見ると明らかに減っているので、女子受験生が減っているのか、共学へ流れているのかどちらかだと考えられますが、とりあえずは個別に見ていきましょう。

上位層は比較的落ち着いているというか横ばいのところが多いです。桜蔭は前年より減少ですがここ数年で見れば昨年に続いて多い人数、女子学院はやや増加ですが数年で見れば少ないです。ちなみに桜蔭女子学院は逆相関の関係になっていて、今年はやや桜蔭寄りかなという風に見えます。早稲田実業・雙葉はほぼ横ばいと言って良いと思います。

そんな中、比較的大きく動いたのが渋渋で、ここ数年でも最小人数となるレベルの大きな減少となりました。男子が大きく増加したのと対照的な動きですが、ここは男女混合定員のため(しかも女子の合格ハードルが元々高い)、男子が増えることでさらに女子が合格しづらくなると考え、敬遠された可能性が高いと見ています。ここは後日、別途掘り下げて分析してみたいところです。

神奈川上位のライバル(?)2校、洗足学園フェリスは揃って減少でした。ただ数年単位で見てみると、フェリスがほぼ横ばいと言える数字だったのに対し、洗足学園は大きく減少した昨年からさらに減少となりました。とは言え、昨年は減少の中でも偏差値は上昇方向だったので、難化によってチャレンジ層の敬遠が起きているのかなとも思えます。今年の数字で偏差値がどうなるのかは確認してみたい感じです。

このところ志願者も偏差値も上昇を続けていた吉祥女子ですが、ようやく一服という感じでしょうか、600を超えたあたりで落ち着きました。鷗友学園は一足早く2021年あたりにピークをつけたように見え、今年はだいぶ減少しています。代わって増加したのが頌栄女子東洋英和で、特に東洋英和はV字回復という感じできています。俯瞰して見ると、この4校同士で、年によって増減を入れ替えながら推移している感じにも見えてきます。

次に出てくるのが大学附属系の3校ですが、ここは立教系の立教女学院・香蘭女学校が減少、学習院女子が大きな増加ということで、対照的な動きになりました。まあ元々立教女学院学習院女子は逆相関の動きに見えるので、今年は学習院女子の年だったという感じですかね。

ここから先、女子校をあまり追いかけていない自分にはいまいちわからないというのが正直なところですが、気になるところだけコメントしておきます。2021年から急上昇(回復?)してきた山脇学園は、小休止というかとりあえず伸びは止まったようです。品川女子も小幅なマイナスですが、まあこの2校は高止まりという方が近いのかなと思います。富士見もそれに近い動きですかね。やや減少方向に見えるのは大妻・共立女子でしょうか。成蹊の減少も、母数が少ないだけにちょっと気にはなります。

あと大きなトピックは、横浜雙葉が1回から2回入試へ変更した点でしょう。2回に分割しながら第1回は昨年より増加になっていて、新規参入の2月2日も300人を集めているので、学校としてはとりあえず成功したと言えるんじゃないでしょうかね。一番影響を受けそうな横浜共立も昨年比では微増だったので、数年前より低水準ではあるもののまずまずといったところかなと想像します。

全体の合計(偏差値50以上)ですが、ここ5年間では最も数が少なくなりました。偏差値64以上で集計したものも同じく最少となっているので、女子の上位層に関して言えば、弱気というか保守的な動きになったか、もしくは共学校に流れたのかどちらかの可能性が考えられるでしょう。ちなみに共学校はこのあと触れますが、集計している中では偏差値64以上は広尾学園しかないので(渋渋は女子編に含まれる)そこも含めて考えると、女子の偏差値上位校の志願者が減少したという結論が導き出せます。

共学:横ばいの附属系と上下の激しい国際系

共学(男女同判定校)は四谷大塚偏差値で見ると広尾学園だけが抜けていて、あとは50台がズラッと並ぶイメージになります。その中でも、大学附属系と国際系の新興校が偏差値上位の二大勢力、残りが通常の進学校といった図式で捉えると、よりわかりやすくなると思います。

とりあえず大学附属系から見ていきます。まず中大附属・芝浦工大がほぼ横ばい、中大横浜法政大学は前年大きく減少からの微増ということでやや少なめ、青学横浜英和成城学園は前年大幅増からの反動減という感じで、附属校は全体的に若干弱めな印象を受けます。その中で唯一、明大八王子のみが右肩上がりで増加が目立つイメージになっています。

次に国際系と言われている括りですが、ここは激しいです。偏差値がやや抜けた感じの広尾学園はだいぶ落ち着いた感じを受けますが、その下からは混戦模様です。まず4年前スタートの広尾小石川は2022年をピークに2桁にまで減少し、特に本科はピークの1/3程度にまで減少しました。とは言え、そもそも定員が少なく合格者も男女それぞれヒト桁しか出なかったりするので、むしろこの辺が妥当なのかもしれません。三田国際はISC(いわゆる本科コース)は横ばいながら、IC(インター)の方が前年比2.5倍近くと爆増しています。このエリアは詳しくないのでわかりませんが、英語入試でいきたい人の受け皿として機能しているのか、芝国際からの移動組なのか、という感じですかね。同じく爆増組としては開智日本橋もあります。今年は埼玉入試から開智グループが賑やかな印象ですが、その余波なのか、ここでも開智日本橋が強かったようです。あとは前年の台風の目だった芝国際が、今年はものすごい逆回転をしたというのが大きなトピックでしょうね。まあいずれにせよ、とにかく忙しいというか騒がしいというか、年による人数の振れ幅が尋常でない感じがありますね。この辺りの学校を志望する場合は、この熱狂に巻き込まれないような冷静さが大事じゃないかなと思います。

あとは普通の進学校に分類していいと思いますが、都市大等々力が前年大幅増からの横ばい、帝京大学・公文国際もまあ横ばい、青稜が大きめの減少、山手学院もやや減少傾向、安田学園が大幅続伸といった感じです。青稜はほぼ全ての入試回で志願者数を大きく減らしていてちょっと気になります。四谷大塚偏差値が昨年大きく上昇しているので、それが逆に敬遠される流れになったのかなという想像もしてみますが。安田学園の増加は、2023年から総合コース募集がなくなり先進コースのみになったということでその影響でしょうが、それでも昨年からさらに大幅増加ということで強い動きですね。

全体(偏差値50以上)の合計数はマイナス約300ということで、まあここも一昨年と同水準に戻った感じです。共学校は特に出願者に対する実受験者数の歩留まりが低い学校もあるので(おそらく複数回受験時に出願料がかからず重複出願するケースが多い)、実受験者数で見ないと正しいことは言えないとは思いますが、全体数が少ない割に男子編・女子編よりも減少数が大きいというのは気付いた点です。ということで、共学志向の流れも一旦落ち着きつつあるのかなという感じを受けます。

全体の人数は減少

ついでに2月1日午前入試全体の人数を集計しておきます。全体と言っても偏差値50以上ではありますが、まあそんなにズレはないでしょう。

ということで、あくまで出願者数ベースではありますが、2023年をピークに減少に転じたということがここからわかります。偏差値63以上についてはやや減少割合が多いので、まあそこからすれば弱気派が多かったと言われても否定はできないかもしれませんね。

後日、受験者数でも集計を取ってみたいと考えていますが、減少に転じたということで中学受験の転換期と言えるかもしれません。まあすぐに大きく変わることはないと思いますが、これまでの過熱一辺倒とは違った見方が出てくる、もしくは違った見方をすべき、という感じではないかなと思いますね。まあ塾側のメッセージは変わらず受験熱を煽る方向だとは思いますが。

2月1日午後入試に続きます。

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