学年別児童数からこの先の入試動向を考える

入試動向の分析 〜学年別児童数より〜 入試データの分析

日本の少子化が進んでいるというのは誰もが知る事実だと思いますが、具体的な数字でイメージしている人は多くないと思います。学年の生徒数というのは中学受験に限らず高校受験・大学受験と受験競争に直結してくる数字でもあるので、受験という軸でまとめてみます。

大学全入時代と言われたり、高大連携や附属校化が進んでいるというニュースはよく耳にしますが、我が子の受験環境はどういうものなのか、今後どうなっていくのか、背景にある数字を把握しておくと正しくニュースに反応できるようになるのではと思います。あまり広げすぎると数字がぼやけてしまうのと、そもそも手が回らないので、首都圏の中学受験というテーマに沿って一都三県の都市部を中心に見るという点はご了承ください。

・データ出典:学校基本統計の集計結果(東京都神奈川県千葉県埼玉県)
・年度は小学校卒業年度を表します。
・情報を合わせるため、現中高生の分は6年生時の児童数としています。
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児童数の推移

一都三県の児童数

まずは一都三県の児童数を棒グラフで見てみます。あまり遡っても手間がかかるだけなので、直近のピークをつけたと思われる現在の高校生世代あたりからを集計しています。

赤字部分が最大数の年です

グラフの通り、周辺3県のピークは2019・20年(に小学校を卒業した世代)となっていて、そこからは緩やかに右肩下がりとなります。唯一東京都だけがまだ増加途上にあり、2027年卒業組がピークになると想定されています。

一方、一都三県と言っても房総半島の先の方や埼玉の内陸部なども含み、減少しているのはそっちじゃないか、中学受験の盛んな東京に近いエリアは増加しているのではと言われることもあります。その辺も考慮してみたいということで、次の基準で東京近郊というデータを作ってみました。

東京都:全域
神奈川県:県央地域・湘南地域以東(相模原市・秦野市・平塚市・二宮町から東側)
千葉県:千葉市以西(印西市・佐倉市・千葉市から西側)
埼玉県:さいたま市以南(所沢市・富士見市・さいたま市・越谷市・吉川市から南側)
赤字部分が最大数の年です

ということで、神奈川・千葉・埼玉は東京近郊に絞ったデータでグラフ化しました。最大数となる赤字に注目すると、先ほどのグラフよりは1〜2年くらい後ズレしていますが、それでも結局2020〜2022年辺りにピークを迎えています。つまり、東京近郊に絞っても周辺3県は既に減少に転じていることになります。

一都三県の合計数のグラフは次の通りです。

赤字部分が最大数年です

結局、一都三県の全体数で見ても東京近郊に絞って見ても同様で、2021年(に小学校を卒業した学年)が児童数のピークで、そこからは緩やかに減少に入っているということになります。ただ、減少とは言っても横ばいと言っていいくらいのわずかな減少ではあり、本格的な減少に入るのは2029年世代以降となります。

一都三県児童数の推移

増減をもう少しわかりやすく見るため、ピークだった2021年を100%として折れ線グラフにしてみます。

2021年がピークだったので当たり前ですが、基本的には減少傾向です。その中で東京都だけがまだ上昇途上にあるというのがわかると思います。

ひとつの気付きは、実は2024年は東京もわずかに下がっていて、全体的にも減少の大きい学年だったということです。そして、東京に関しては減少は一時的なもので、2025年からまた上昇に転じることが示されています。

ちなみに今回の集計をしようと思ったキッカケは、X(旧Twitter)で呟きましたが、早稲アカの入試分析資料のグラフに疑問を感じたことでした。2024年を100%とした上のような折れ線グラフですが、調べてみて驚いたのは、2023年に配られたものと全く同じグラフで、年度だけが書き換えられていたことでした。別にミスはあり得ることだし、ウラがあるなどと騒ぎ立てたいとかではありませんが、誤った数字で色々語られるのはよろしくないと思うので、正しいと思われるグラフを載せておきます。

2024年を起点とした年度推移のグラフ
2023年を起点とした年度推移のグラフ

で問題にしたいのはここから先の話です。2025年以降はどうなるのかということ。

上のグラフでは東京のみ上昇、一都三県の合計では徐々に減少ということになっていますが、まだ漠然としていて実態が掴みづらいです。で受験は厳しくなるのかい?緩くなるのかい?どっちなんだい!というところですね。

ということで、先に集計した数字を使って、東京近郊のみで集計したものでグラフを作ってみました。基準は先のものと一緒ですが再掲します。神奈川はちょっと広いので、横浜・川崎だけに絞ったものも追加で載せています。

東京都:全域
神奈川県:県央地域・湘南地域以東(相模原市・秦野市・平塚市・二宮町から東側)
神奈川県(横浜・川崎):横浜市・川崎市のみ(ここで全体の57%)
千葉県:千葉市以西(印西市・佐倉市・千葉市から西側)
埼玉県:さいたま市以南(所沢市・富士見市・さいたま市・越谷市・吉川市から南側)
2021年を100%としたときの増減の割合を示しています

先ほどのグラフより、全体的に上方修正されているのがわかりますね。東京都以外はピークがすでに過ぎていることはハッキリしていますが、下げ幅は小さくなっています。

分かりやすくなるよう2024年に線を引いたのでそこを基準にして見ると、ここから2028年まではほぼ横ばいかむしろ上昇方向で、ピークをつけるのは2027年(新小4)世代となっています。ここで集計した数字の方が中学受験エリアに近いと考えられるので、結局、少なくとも2028年までは低く見積もっても現状維持、受験率の動向によってはさらに過熱する可能性まで考えられそうです。

エリアごとだと、東京都は既に見たのでまあいいとして、埼玉県の高止まりが目につきますね。2024年は埼玉受験が盛り上がっていましたが、人数も増加方向であればこの熱はしばらく続くと見た方がいいかもしれません。
神奈川は2024年にだいぶ緩和したなと感じましたが、これは大きく児童数が減っていたことが背景にあるようです。この先は2026年にももう一段の緩和がありそうですが、その先は2028年までそれなりの数字が維持されそうです。横浜・川崎に限れば、2024年から2028年までほぼ横ばいと見ていいでしょう。
千葉は既に減少途上にありますが、一旦下げ止まりそうな感じで、ここから2028年までは横ばい圏と見ていいでしょう。

ということでここでの結論は、少なくとも2028年までは首都圏の中学受験は緩和しない、現状維持かそれ以上の厳しい状況は続くということになりました。緩和する可能性があるとすれば、神奈川の湘南地域など都心から離れたエリアに限定されて起こるのではと思います。

2029年以降は

2029年卒業の学年(新小2)以降についても少し触れてみたいと思います。

2029年世代以降は、全国的に見てもさらなる少子化に入りそうです。小学校入学前の数は学校基本統計には出てこないので、政府統計の総合窓口というサイトにある出生数・合計特殊出生率を見てみます。

データ:政府統計の総合窓口 人口動態調査

これを見ても、2015年→2016年のところがターニングポイントになっているのがわかります。緩やかに減少しながらも2015年まではなんとか踏ん張ってきた感があるのですが、2016年に100万人を割ったあとは、何かが崩れたかのように減少ペースが加速しているのがわかります。出生率の方も、2005年を底として意外と健闘してきた感がありますが、2019年から崩れ出した感じです。

親世代が減少するので出生数が減るのはまあやむを得ないと思っていましたが、その上に出生率まで減少を始めていたようで、これはちょっとショックに思います。少子化対策とか言われている割には逆回転が始まってしまっているように見えます。2016〜2018年あたりに何かあったとしか思えませんが、何かありましたっけ?

話がズレるので元に戻しますが、ついでに東京都についても調べてみました。こちらは東京都保健医療局のサイトにデータがありました。

データ:東京都保健医療局 人口動態統計

こちらも転換点は2015〜2016年のあたりにありそうです。2015年までは出生数も出生率もわずかながら上昇を続けていましたが、2015年を境に右肩下がりへと転換しています。

ということなので、2029年世代(2016年生まれ)から先は、中学受験率の極端な上昇でも起きない限り、緩和していくのは避けられない流れだろうと推測できます。逆に言えば、中学受験において大転換が起こるとすればその辺りになるのかなと予測します。

何が起こるのかまではまだ予測がつきませんが、今の価値観がそのまま続いていくとは考えづらいです。中学・高校は大学受験の影響力が大きいので、変化を捉えるにはそっちを見ていった方が良いかもしれません。むしろ大学の方がひと足早く転換期を迎えていそうで、既に選抜試験が機能しない大学が増えてきていて、今の序列や価値観がそのまま生き残っていくとはちょっと思えません。大学入試の方は定員1倍(=全入)の波が結構なところまで来ているようなので、これがどこまで波及するものなのか、近いうちに調べてみたいと思っています。

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