前ページからの続きです。
3. 入試の比較
最後に中学入試の比較です。
偏差値の推移
とりあえず、入手できた2009年以降の四谷大塚50偏差値の推移をグラフにすると以下の通りです。
ちなみに50偏差値表を見ているのは、過去記事(50%偏差値表って何に使うの?)で書きましたが、50%偏差値が合否ラインになっていて難易度をより正しく表していると考えているためです。
3校に関してはほとんど動きはないですね。年度ごとの上下は、学校難易度の変化というよりは母集団全体の上下に引きづられていると考えた方が正しそうです。細かく見ると、ここ数年で聖光学院が上がって開成との差を詰めている、くらいですかね。
参考のために渋幕・渋渋も薄く入れていますが、渋渋の上昇が半端ないのがわかります。
ちなみに難易度の変化がある学校の場合、過去問演習の時の平均点や合格最低点に気をつけるべしというのが個人的な注意ポイントですかね。古い年度で合格最低点を超えた!と言っても、それはそのときの難易度での話で、今の難易度基準では危ういということがありえます。
入試問題のポイント
続いて入試問題の違いについてです。これは四谷大塚中学案内に掲載されている情報を参照します。
2022年度の入試問題分析ですが、学校の傾向としてポイントだと思われるところにアンダーラインを引いておきます。
算数 | 国語 | 理科 | 社会 | |
---|---|---|---|---|
筑波大学附属駒場 | 大問4題の出題形式は例年通り。問題の難度 は例年より少々やさしくなった印象。条件整 理の仕方や解法の選別が明暗を分ける。問題 を解くときは〇×だけではなく、「より短時 間で上手に」解く方法はないかを常に研究す る姿勢が不可欠。自分の解き方より良いもの があれば柔軟に取り入れられるようになって 欲しい。また、「スピード、正確さ」は他校 以上に要求されるため、日々の計算トレーニ ング等は「一発正解」にこだわって取り組ん で欲しい。 | 漢字の書き取り以外の12問は全て記述問題。 40分という制限時間で正確に読み、出題意図 を理解し、書ききるのは難しい。設問の形式 が「どういうことですか」「なぜですか」 「どのように捉えられていますか」などと簡 潔なものが多いので、設問の意図する内容を 正確にとらえた上で、文章の本質をつかみ、 比喩的な内容を具体的に、具体的なものを抽 象化して答えられる思考力、語彙力、表現力 が必要である。 | 本校の特色である物理分野の問題は、昨年同 様後半で出題されたが、昨年同様にやや易し かった。その他の大問にも難問は少なく、全 体的に難易度は高くなかった。2年連続で問 題が易化したように感じるが、数年で見ると 力学の難易度が高いことや、選択肢問題で あってもすべて選ぶ形式となっており、正確 な知識が要求されるのが本校の特徴である。 その他は基本的な問題がほとんどなので、 『四科のまとめ』などを使って基本知識を完 璧に近いレベルに仕上げておきたい。 | 用語記述は2問。記述問題は10字程度が1問 出題された。設問の中心は文の選択肢による 記号選択問題。選択肢の文を正確に読みとる 力が要求されている。各分野とも、比較的長 い文章を読ませ、関連することがらを問う形 式が中心。地図や統計などの資料に関する問 題も毎年のように出題されているので、各種 資料の扱いにも慣れておきたい。知識だけで はなく、社会で起こっている出来事の背景を 考え、ものごとを多角的に捉える力を身につ けておきたい。 |
開成 | 大問4題構成。立体図形の問いは丁寧な処理 を心がけて、全問正解したい。条件整理・場 合の数・規則性の問いの中には最高難度の問 題も含まれる。速さの問いは「常に5分差の 時計」という目新しい設定だが、題意を読み 取り、ダイヤグラムの扱いに慣れていれば解 ける問題。開成の算数は、あくまでも基礎・ 基本的な事柄を丁寧に積み重ねて解く問題が 中心。目先の解答・解法を教わるのではなく、 算数の学習を通して「論理性と自力でものを 考える姿勢」を身につけて欲しい。 | 物語文と漢字の書き取り(5題)と読解記述 問題(5題)の出題。総字数10000字を大き く超える長文の出題は過去に例がない。昨年 の8000字弱に続いて、超長文の出題だが、 これをもって文章が「長くなる傾向にある」 という判断はできない。同じような傾向の出 題を続けないようにしているだけで、あえて 言えば、類題演習で鍛えられないようにする ために、文章テーマや長さを変えて対策を立 てにくくしているのが「傾向」か。 | ここ数年で合格者平均が一番低くなったが、 受験者平均との差は例年と変わらないので、 解ける問題の取りこぼしは厳禁。平均点の推 移から、直近の3年では問題が難化している ように見えるが、これといった難問が出題さ れているわけではない。初見の実験・データ を読み解いて現場で思考するという出題傾向 は例年通りであり、過去問を使った対策は有 効であるといえる。一方、問題文は確実に長 くなってきており、問題の文章をもらさずに 読み、そこから考えるヒントを取り出す練習 が必要。 | 大問3題~4題で、地理・歴史・政治国際を 総合的に問う形は、今年も踏襲された。今 年に限っては、図版資料や統計資料を用いて 考えながら解く問題が見られず、比較的時間 に余裕のあったと思われる。本校の特徴とし て、江戸・東京に関する問題がある。ほとん どが知識問題なので、対策が必要である。 『予習シリーズ』の内容を定着できているか が鍵となる。今年、唐招提寺を漢字で答える 問題が出されたが、このレベルの問いをパー フェクトに答えられるようにしたい。 |
聖光学院 | ここ数年の出題内容は変革期と言え、以前は 比較的オーソドックスな受験生の学習量・ 努力量がそのまま試される試験と言えたが、 近年は受験生にとって「初見」の問題が並ぶ ようになり、読解・思考を試す意図が強く なった。合格への鍵は「誘導を意識する習慣」 「初見の問題でも手を動かす胆力」「多くの 入試問題に触れる機会」である。特に聖光の 入試問題はよく練られた良問であり、過去問 を存分に取り組んでもらいたい。 | 漢字と語句で2題、物語文と説明文で2題と いう構成は例年通り。物語文は10問中 記述式が3問(10、60、80字以内)で、 説明文は9問中記述式が2問(20、60字 以内)。残りはすべて5択の選択式。過去2 年と比べると文章総字数、記述総字数ともに 大幅に増えている。内容も易しくはなく、 50分で仕上げるのはかなり難しい。 | 総小問数・形式面は例年通りで、生物・地学 ・物理・化学からまんべんなく出題された。 全体としてはやや難しめ。要求されている 知識が必ずしも理科の教科書に載っている ものではなく、日常の科学的な事柄に興味 ・関心を持っているかの総合力が必要とされ る。テキストで基本事項を習得するだけでな く、学校でのさまざまな体験、テレビや新聞 などの情報にも積極的に接して、視野を広げ ていくことが大切。 | 総設問数は1・2回とも約40問、試験時間 は40分、高いレベルの基礎力と処理能力が 必要。用語記述の多くが漢字指定で、自然地 理や地形図の読みとり、憲法条文の穴埋め、 図表・グラフの分析などは本校の特徴で、今 年も踏襲されていた。例年見られるカタカナ 用語の出題もあったが、一般常識・生活知識 系の問題については少なかった。政治国際分 野の出題割合が比較的高い。新聞やテレビの ニュースなどを通して世の中の動きに興味関 心をもち、『ニュース最前線』を用いて対策 を練ることが重要。 |
超ざっくりまとめると、
- 筑駒:試験時間が短めで素早く正確な読み取り能力・判断力が必要
- 開成:毎年傾向を変えて対策しづらくしている、総合力が問われる
- 聖光学院:ボリューム多め、高いレベルの基礎力と処理能力が必要
という感じでしょうか。いや、まとめると逆にわかりづらいか。。。とりあえず高い能力が必要ですということです(雑)。
ちなみにこの3校は試験日がうまいこと2月1〜3日まで(聖光②を入れれば4日まで)分かれているので、通える範囲ならば男子トップ層はこの3校を連戦するのが定番になりそう(なっていそう)ですかね。
4. まとめ
以上、ここでは表に出ている情報を比較のかたちでまとめました。
興味の赴くままにまとめただけで、特にこれを参考にしてほしいとか何か主張したいとかいうものは特にありませんが、何かの気付きになったり判断材料になるものが少しでもあればと思います。
それぞれの学校ごとにまとめたこちらもぜひご覧ください。
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