【偏差値】2022年と2023年の各塾の偏差値表を比較してみた

塾偏差値表の比較 受験校選びのTIPS

前ページからの続きです。

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偏差値表を比較してわかったこと

最後に、全体を通して見てきて気になったことをざっと挙げてみます。

それぞれの偏差値の出し方に違いがある

四谷大塚、日能研、サピックスそれぞれの偏差値表を見てきましたが、ちょっと出方に違いがあるなと思います。

四谷大塚とサピックスは上下の動きがあまり大きくなく、同じ学校だと入試回が違っても同じ上昇幅だったりすることが多いです。

例えば、四谷偏差値だと広尾小石川や青稜はすべての回で+2で、これは男女ともに同じだったりします。果たして実際にこんな綺麗な結果になるのか、個人的には疑問です。そもそも合格者総数が10人や20人の回で、さらに合不合を受けていてという人数の中で、きちんとしたデータになるのかも怪しいと思うんで、恣意的な操作が入っていてもおかしくはないですね。別に悪意や学校との裏協定のような陰謀論チックなものがあるとまでは思いませんが、えいやで決めている感は十分に感じます。

それに比べると日能研R4の方が変動が激しく、実際の入試結果を反映しているのではという印象は受けました。合格者数の少なそうな入試回は、前年度表にはあっても2023年度表からは消えていたりもしたので(広尾小石川②・④とか三田国際IC②・IC③とか)、”入試結果偏差値”として見た場合の信頼性はこちらの方が高いような気がします。(あくまで気がするレベルで本当のところはわかりませんが)

ただ日能研R4のデメリットは、年による変動が激しいので、この表だけを見ていると前年の入試結果に振り回されてしまう可能性があるという点ですかね。偏差値が低いと思って受けたら翌年は急上昇していることも考えられるし、実は日能研の結果が悪かっただけ、という可能性も否定できません。

そういう意味では、他の偏差値表との横比較や、年度ごと推移など縦方向の変化も見た上で考えていく必要があるんだろうと思います。

本当は全ての結果データをオープンにして算出根拠を明確にしてくれるのが一番いいんですが、まあそこまでは望めないですかね。

偏差値の上下が真逆の学校がある

同じ入試回ながら、偏差値表によって上下が逆のところがあります。+1や-1なら誤差とも思えますが、2ポイント以上の差があるとちょっと気になります。例えば以下のところです。

入試日程四谷大塚80日能研R4SAPIX80%
芝浦工大①2月1日男53→52(-1)
女55→54(-1)
53→55(+2)
獨協②2月1日午後50→52(+2)54→52(-2)
慶應中等部2月3日64→65(+1)67→66(-1)60→58(-2)
洗足学園①2月1日65→67(+2)65→64(-1)57→57
東洋英和A2月1日58→60(+2)58→55(-3)
富士見②2月2日52→54(+2)52→50(-2)
富士見(算)2月2日午後56→57(+2)58→56(-2)

東洋英和Aが激しいんですが、四谷でも日能研でも共に58だったのが、2023年度だとそれぞれ60、55と、5も離れてしまっています。倍率は2.1→2.3倍に上がっているので、どちらかといえば四谷大塚の方に信憑性を感じますが、どう考えればいいでしょう。

この辺りのデータの信頼性は、それぞれから出した合格者数にもよってくると思うので、各塾の合格者数も見ないとですかね。ということで見てみたところ、四谷大塚:48名、日能研:15名ということでした。入試2回分の合計でこの人数なので、ちょっと日能研の15名での数字は、データとしての信頼性に欠ける感じがします。

いちいち合格者数を見ていかないといけないというのも面倒ですが、こういう数字の裏側も意識しないとミスリードしそう(されそう)なので気を付けた方がいいかもしれません。

神奈川の男子校・女子校が弱い

本文中で何度か触れましたが、神奈川県にある男子校・女子校で下げているところが目立ちます。ちょっとリストアップしてみます。

学校名四谷大塚80日能研R4SAPIX80%
聖光学院①+1 / ②+1①+1 / ②+1①+1 / ②+1
栄光学園-1+1-1
浅野-1-1+1
慶應普通部-1+1±0
サレジオ学院AA-1 / B+1±0A-1 / B±0
逗子開成①-1 / ②-1 / ③-1①+1 / ②+1 / ③+1①+1 / ②+1 / ③±0
鎌倉学園①-3 / 算±0 / ②-1 / ③-2①-3 / 算±0 / ②±0 / ③+3①-3 / 算-1 / ②±0 / ③+1

男子校はこうして見てみるとそれほどでもないですね。四谷大塚だけが低いということで、塾の傾向なのかもしれません。

学校名四谷大塚80日能研R4SAPIX80%
洗足学園①+2 / ②+2 / ③+2①-1 / ②+1 / ③-1①±0 / ②-1 / ③-1
フェリス女学院-1±0-1
日本女子大附属-2-1
横浜共立学園A-2 / B-1A-2 / B-2A-1 / B-1
横浜雙葉-1-5±0
清泉女学院①-1 / ②-1①-3 / ②-2
鎌倉女学院①-1 / ②-3①-4 / ②-3
湘南白百合1科+1 / 4科+31科+6 / 4科+1

女子校は明確に下落してますね。洗足学園と湘南白百合だけが例外で、あとは軒並み下落している感じです。

栄光学園・鎌倉学園や、清泉女学院・鎌倉女学園など、鎌倉方面の学校の下げが強い気がするので、立地面でやや敬遠されている傾向が強いんですかね。都内から通うのは確かに大変なんで、この辺りだと神奈川県内の受験者動向がポイントになるのかもしれません。

そして、早速入試変更のニュースも出てきています。

開成・桜蔭のサピックス偏差値について

2月1日のサピックス偏差値を見て気になるのが、開成が飛び抜けて高いこと、逆に桜蔭はそこまで高くないことの2点です。特に桜蔭は女子最難関と言われる割には、偏差値では渋幕より低くなっています。

一般的に高偏差値帯は男子が多いというところから、サピックスの偏差値表は男女混合の偏差値で判定するので、女子には高偏差値の学校がない(=高偏差値の女子が少ない)と考えることもでき、実際私もそう思っていたのですが、よくよく調べていくとどうもそうではなさそうなデータが見えてきました。

そのカラクリは、サピックス中学入試分析会で配られた「合格力判定資料」から読み解けます。データをここに掲載するわけにはいかないので、お手元にある方は見直してみてください。ちなみにサピックスオープンを受験するとアクセスできる入試結果情報サイトからも同じもの(より対象校が多いもの)が見られます。

検証のためもう一度、女子2月1日の偏差値表を見てみます。

桜蔭と女子学院の偏差値差は1しかないですね。

では合格力判定資料でこの2校を見比べてみましょう。すると次のような違いがあることに気が付きます。

  • 桜蔭の80%ラインは合格者の山の頂点
    一番合格者が多いのが80%ライン
  • 女子学院の80%ラインは頂点プラス2〜3
    80%ラインは合格者でも上位層

つまり人数分布の山の位置と80%ラインが引かれているところにズレがあり、桜蔭は最も合格者が多くなる山の頂点が80%であるのに対し、女子学院は頂点である58〜59より上に80%が引かれているということです。他の学校と比べてみるとよくわかりますが、一般的には女子学院の形の方が普通なので、桜蔭の分布が特殊だと考えられます。

なぜ桜蔭がこうなっているのか。それは、上位層の不合格者が少ないからという一点に尽きます。人数分布を見ると、偏差値68くらいから一気に合格者が増えてきて62を頂点に減少に転じます。で、こういうかたちなら、通常は66くらいから不合格者が出てきて80%ラインがその辺りに来てもおかしくないのですが、桜蔭の不合格者グラフは底辺に張り付いたままなかなか増えず、ようやく62のところで増え始めるということになっているのです。つまり62より上では合格率がほぼ100%なんです。これが偏差値62になっているカラクリです。

これを開成と見比べてみると違いがハッキリわかります。開成には70台もそこそこいますが、やはり68くらいから一気に合格者が増え、64あたりでピークを迎えます。と同時に不合格者も68くらいから増えていくので、結果的に80%ラインは67〜68あたりに引かれる、ということになります。

つまり開成と桜蔭で合格者の分布にはそれほど大きな違いはないのですが、桜蔭の不合格者の分布が低偏差値の方に偏っているために低く見えてしまうという話です。

ここから言えるのは、開成の68と桜蔭の62という偏差値を比べて男子の方が優秀な子が多いとか(実数では確かに多いですがこれとは無関係)、女子の最難関の方が楽だとかいう話では全くないということです。単に、女子の合格率が異常に高いというだけの話です。女子は偏差値通りに決まりやすい、男子はヤラかす子が一定数いる、ということかもしれません。

また、桜蔭(62)と渋幕(64)の偏差値を比べて渋幕の方が上(難易度が高い)、という判断をする人もいるかもしれませんが、これは渋幕が男女混合で偏差値を出しているので、ポカをする男子が不合格を持ってくるので偏差値が高く出てしまう、という面も多分にあると考えられます。渋幕は問題にクセがあるのでまさかの不合格も起こりやすい、というのも理由のひとつかもしれませんが、いずれにせよこの偏差値の上下をもって難易度の上下、もしくは学力層の上下は語れないということではあります。

もう一点、この合格判定資料を見ていてわかったのは、サピックスの最上位層が2月1日に受験するのはほとんどが開成か桜蔭だということでした。その他の学校(麻布、駒東、女子学院など)でそこそこ合格者が出てくるのが62くらいからということで、それ以上の層はそもそも受験もしていない(開成・桜蔭を選んでいる)ということがわかります。そしてこの流れが続くのであれば、他校(2月1日校)の偏差値はこの辺で頭打ちになって然るべきだということになります。

サピックスがこの2校へ圧倒的に合格者を出している理由がわかりますね(御三家という枠組みが崩れた理由もわかりました)。サピックス、恐るべしです。

まとめ

以上、偏差値分析をお届けしました。最後にざっくり、2023年入試の全体感をまとめると以下のポイントが挙げられるかと思います。

  • 新興校を中心に、特に午後入試で上昇度合いの大きな学校が多い
  • サピックス偏差値だけ別傾向で、午後入試を中心に下落が多い
  • 大学附属校は下落が多い

まとめようと抽象度を上げるとこんなつまらない結論になってしまいますね。それよりは、やはり実際のデータを見返してもう一度じっくり観察してみていただければと思います。

思った以上に偏差値表による違いは大きいので、偏差値表から学校をピックアップする場合は複数の偏差値表を見たり、過去からの推移を見たりした方がいいのではと思います。実際には通っている塾の偏差値表を見て判断している人がほとんどなので、その偏差値表を見た印象で志望動向が作られるというのも意識しておきたいところです。

まあいずれにせよ、偏差値表に踊らされることなく、逆に偏差値表を味方につけて受験を乗り越えていっていただければと思います。

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