50偏差値表からの志望校選び

50偏差値表からの志望校選び 受験校選びのTIPS

6年生模試のシーズンとなり、一喜一憂しながら日々と格闘しているころと思います。そして、入試日程を踏まえた具体的な受験校検討をしている家庭も多いのではと思います。

我が家も昨年は夏あたりから過去問演習を始めて徐々に受験校を固めていった感じですが、模試の結果を見ながら不安に駆られている人もいるのではと想像します。また時間がそれなりに限られる中で、どの学校の過去問に手をつけるべきかであったり、過去問の得点状況をどのくらい信頼していいのか、というあたりで不安を感じている方もいるのかなと思います。そんな観点で、志望校選びについて思いついたひとつの考え方を挙げてみようかなと思います。これがいいとかお勧めするとかいうのはおこがましいので、ひとつの思考実験として何か新しい発見があればと思って読んでもらえればと思います。

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50%偏差値で合否判定する

以前の記事で、50%判定偏差値はその模試での合格ラインであるというのを書きました。詳しくはこちらをご覧ください。

これを書いた後も色々考えたのですが、個人的には80%判定はたまたま当日ダメだった子のデータなどによるブレが大きくなるので、統計的に人数の多くなる50%判定の方が正しく難易度を示しているんじゃないかという考えに至りました。まあ難易度云々はさておき、少なくとも50%判定は合格判定ラインとして機能するので、使い道がありそうだと感じています。

ここから50%判定ラインを使った合否判定方法について書きます。

まずは志望する可能性のある学校について、受験した模試での50%判定偏差値と自分の偏差値とを比べて見てみます。ここでその学校の50%判定偏差値を超えることができていれば、少なくとも今回の模試の内容と母集団で考えた場合は合格ラインに達していたと考えることができます(今回の模試がその学校の入試だったと仮定)。逆に50%判定偏差値に届いていなければ、今回の模試ではその学校は不合格だったと考えます。

6年生後半は通常4回模試を受験することになるので、こうやって4回分それぞれで判定していくと、あぁこの学校だとまず合格ラインを下回ることはなさそうだなとか、何回かに1回はダメな可能性あるなとか、逆に平均偏差値は届かないけど問題が噛み合えば超えられるといったことが、肌感覚として感じられるかと思います。

感覚というとなんだが非科学的な感じがしますが、ものごとを選択するときには結構大事なものじゃないかと思っています。データをいくら揃えていったところで本番の問題が分からない以上完全な結果予測はできないわけで、受験校を決定する際も、最終的には積み上げた知識や経験から何とか判断を下して入試に送り込むわけです。このとき、客観的なデータや学校の好みを入れるのもちろんですが、合格の可能性がどのくらいありそうかを感覚値として持っているのは受験戦略を考える上で大きな武器になると思います。
(合格可能性なら模試の判定で80%とか60%とか出るのでそれを見ればいいじゃないかという見方もありそうですが、少なくとも私は、80%判定が出たところで20%は落ちるということで全然安心できなかったし、50%や60%判定を見ても実感がわかずモヤモヤし、ただただ不安が積み重なっていく一方だと感じました)

具体的に考えてみる

ちょっと話が抽象的なので具体的に考えてみます。

例えば我が家に双子の男子、AくんとBくんがいたとして、どちらも四谷大塚の持ち偏差値は55だったとします(これをY55と表記します)。そしてそれぞれの4回模試の偏差値が次の通りだったとします。

Aくん
Aくん

ぼくの偏差値は 57・53・56・54 だったよ。
(平均は55)

Bくん
Bくん

オレの偏差値は 52・61・50・57 だったぜ。
(平均は55)

持ち偏差値は同じY55ですが、AくんとBくんではテストごとのバラつきが違います。

2022年入試版の四谷大塚80偏差値表で2月1日を見ると、Y55に巣鴨・世田谷学園が並んでいて、Y56にも攻玉社・城北・桐朋があるので、まあ大体この辺りが一般的には適正校とされると思います(話を簡単にするため都内の男子進学校に絞って話します)。

で、このどこかを志望校として書いた場合、模試の結果としては、

Aくん:80%・60%・80%・70%

Bくん:50%・80%・40%・80%

みたいな感じで判定が出てきます。これを我が子の判定と思ってまじまじと眺めてみてどう思うでしょう?一応持ち偏差値的には適正校ですが、よしこれで大丈夫!と思えるでしょうか。

Bくんは見るからに波が大きく怖いですが、Aくんの方も安定感はあるものの60%判定も含まれているので、まあここを2、3回受け続ければ大丈夫かな?とは思うものの、2月2日以降は偏差値は跳ね上がってこの確率論は効かなくなるわけで、全く安心とはいきません。ましてや、第一志望は学校別の冠校でここは抑え校、とかなっているとかなり怖くなります。

ここから、直前期に親が陥る不安感を感じていただけるでしょうか。少なくとも私は、架空のこの話を書いて考えているだけでもちょっと胃の辺りがムズムズしてきます。

さてここから、50偏差値表の出番です。

しつこいですが、50%判定偏差値は模試での合格判定ラインです。巣鴨・世田谷学園を50%偏差値表で見てみると共に51となっていて、その上に52:攻玉社・城北、53:桐朋と続きます。これでAくんBくんの偏差値を使って合否判定するとこうなります。

Aくん:

Bくん:()・×

Bくんの1回目は桐朋のみ×、あとは○なのでカッコ付けしました。ということで、Aくんは4戦全勝、Bくんは3勝1敗(または2勝2敗)となっています。

Aくんに関しては桐朋でも全勝だし、それ以外だと1〜2ポイント程度の余裕もあるということなので、サポートラインとしてこの偏差値帯の学校を設定することには割と自信を持っていいだろうと考えることができます。そして、56の芝や55の本郷も射程圏に入ってきます。

一方Bくんですが、残念ながらアウトの回があるので安心はできず、サポートラインはもう少し下げる必要がありそうです。ただ一方で問題がハマれば61まで手が届くこともあるので、芝・本郷だけでなく海城・駒東・武蔵・早稲田あたりまでワンチャンあると考えても良さそうです。

補足

50%判定を合格ラインと見るという点については冒頭で紹介した記事(50偏差値表って何に使うの?)で説明している通りですが、本当に合格としていいのか?という点について上の例で確認してみます。例えば55の本郷でそれぞれの合否判定するとこうなります。

Aくん:××(2勝2敗、合格率50%)
Bくん:××(2勝2敗、合格率50%)

確かに合格率50%ですよね。持ち偏差値は平均を取っているので当たり前っちゃ当たり前ですけど、つまりそういうことです。(もちろん1回だけ飛び抜けた成績を取った場合はズレますけど、理屈がわかればそれなりに考えられますよね)

考え方のまとめと注意点

以上、この考え方を一言でまとめると以下の通りです。

50%判定偏差値を使ってそれぞれの模試で合否判定することによって、合格の可能性を感覚値として持つ

これはあくまで模試での机上の話なのでひとつの判断材料でしかありませんが、今年の受験生の母集団での立ち位置は割と具体的にイメージできるのではないでしょうか。不安に苛まれる中、闇雲に当てずっぽうに突撃するよりも気持ちの上で余裕はできると思います。

受験校を探し出す際、模試での最低偏差値と50偏差値表を照らし合わせながら探すというのもアリな気がします。

注意点は、これはあくまで模試の結果での話で、本番とは時期も問題も違うということですね。合格判定は前年度のデータを元に出されていますが、それはここから本番まで走り切った人のデータなので、ここで安心して走るのをやめればあっという間に置いていかれるでしょう。また入試問題も各学校により異なるので、過去問を使って相性を確認したり近付けたりする努力は当然必要です。

このデータと過去問の結果を総合してどのくらいイケそうかという感覚を掴み、入試日程と照らし合わせながら受験校を詰めていくと良いのではと思います。

偏差値表の使いどころ

このような感じで、50%判定だと具体的なイメージを作りながら受験戦略を練っていくことができ、特に受験直前期は50偏差値表の方が使えるんじゃないかというのが私の結論です。

じゃあ一般的に使われている80偏差値表は何なんだということですが、個人的には6年生前半までの目標設定としては80偏差値表の方が適しているだろうと思います。学力の到達目標は高い方がいいでしょうし、実際に50%に達したところで合否ギリギリのラインなわけで、それだと現実的にはもう1ランク下げたところが主戦場になるでしょう。

また直前期であっても、子供に見せるのは80偏差値表の方が良いと思います(もし見るならば)。50偏差値を見ることでもう大丈夫とか、手が届いた感覚になって油断や慢心につながる方が心配になります。まあ50偏差値にも届いていない場合は目標が近くなるのでモチベーションアップできるかもしれませんが。

いずれにしても、80偏差値、50偏差値をきちんと理解して使いこなすことが大事ということでしょうかね。

まとめ

以上、偏差値からの志望校選びについて書いてきました。

かなり偏差値に偏った話なので、そもそも学校選びは偏差値からじゃないだろうとかツッコミがあることは重々承知してはいますが、とはいえ現実的には可能性のある/なしがあってからの学校選びにはなると思います。そういう意味でひとつの考え方として提示できればなと思いました。

ここから本番まで親の方もヒートアップしていくことになり不安も増大していきます。そこに付け込むというと言い方はアレですが、受験ビジネスもそれを見越して色々魅力的な課金先を用意してくれています。別にそれを利用することが悪いことだとは思いませんし、昨年当事者だった親として気持ちはとてもわかります。今から振り返っても走っている最中は必死だったなと思いますし。

ただ実際のところ、受験までの時間が決まっている中で何かを取れば別の時間は削られるわけで、必ずしも課金することが良い結果に繋がるとも限らず、結局は親の安心料という側面があるのは否めない感じがします。それはそれであまり健全な世界とも思えないし、中学受験全体のマイナスイメージにも繋がっている気はします。

親の立場として、まあ不安をなくすことは無理でしょうが、そもそも不安がどこからきているものなのかを認識して、少しでも冷静に判断ができるように情報を使えればというのが思うところですね。そんな一助になればと思います。(これは数年後の自分のためにも残しておきたいところでもあります)

余談ですが、たまにD判定(35%)や45%判定からの逆転合格とかいう記事を見ることがありますが、そもそも50%が合格判定ラインなら全然逆転じゃないですね。上の具体例で見た通り、そのくらいの上下動は普通にありそうです。そういう煽り文句に呑み込まれないようにはしておきたいところです。

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