上位校を目指すのか、実力相応の学校を選ぶのか

受験校選びのTIPS

最近ハマっている日経テレ東大学というYouTubeチャンネルがあるんですが、その中で面白い話があったので、中学受験の学校選択について考えてみました。

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小さな池の大きな魚効果

こちらの動画です。

データで教育改革!教育経済学者・中室牧子

動画で話されている内容は面白いので時間があるときに見てもらえればと思いますが、その中で話されていた以下の文言に引っかかりました。

小さな池の大魚効果
所属する集団のレベルが高すぎると有能感が薄れて能力が落ちてしまうこと

大人であっても周りと比較することで自分の価値を決めてしまう傾向があり、ハイレベルな集団に入って相対的に自分の能力が低いと感じると、自信をなくし能力も落としてしまうという話です。中学受験用語に翻訳すると、”無理して”難関校に入っても結局伸びることができずに大学受験に失敗してしまう、という風にも言い換えられると思います。

この言葉でググっても結構記事があるので、その界隈では割と一般的な話のようです。英語ではBig-fish–little-pond effectと言うそうです。まあ鶏口牛後という四字熟語もあるくらいなので、人類の普遍的な真理を再検証しただけなのかもしれませんが。

まあこういうのは中学受験親なら一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

ちなみに動画の中にあった、「第一希望に入学した最下位の子と第二希望に入学した1位の子では、後者の方が結果が良い」というのはちょっと比較が極端すぎで、現実の入試において第二希望に1位で入学するレベル感の子なら、おそらく第一希望でも上位、少なくとも真ん中より上には位置すると思うので(何らかの理由で入試当日失敗しただけ)、それと最下位の子を比較するなら結果は当たり前じゃんと個人的には思いましたが、まあそこは目をつぶっておきます。それは置いておいても、上位の学校に入ることが必ずしも良い結果をもたらすわけではないというのがポイントかと思います。

もしこの話を100%信じるならば、自分の能力以上の学校に合格し入学する、いわゆる下剋上や逆転合格というのはヤバいという話になりますかね。

入試の成績と入学後の成績は一致しない

一方で、学校説明会のQ&Aでは必ずといっていいほどこんな話が上がります。

Q:繰り上げ合格で入学しても勉強に付いていけるか不安です。
A:入学時の成績と、入学後の学業成績は必ずしも比例しません。繰上げ合格でも全く心配はありません。

繰り上げ合格ということは、入試の成績でいえば最底辺、つまり今回の入試の合格者集団の中では最底ラインにいたことがはっきりしている状態ということになります。合格者が300人なら300番目以降の成績だったということが明確なので、大丈夫かと心配になるのも無理はないでしょう。ただそれに対しては、どこの学校でも版を押したように同じ答えが返ってきます。入試の成績と入学後の成績は違います、心配いりませんよと。

こちらを100%信じるならば、ギリギリでも何でも合格さえしてしまえばよいという話になりますね。

さてどっちが正しいんでしょう?

ひとつだけ補足するならば、このギリギリの成績というのは「今回の入試において」の結果にすぎないので、もう一度同じ集団で試験をやったら結果は違うだろうということもよく言われます。受験者の得点は正規分布していて、特に合否ライン近辺には多人数がひしめきあっているので、数点の違いで100番近く順位が入れ替わることも珍しくないという話も聞きます。具体的に考えると、例えば合格者が200人いたとして、合格最低点〜+10点の間に100人近くいるとするなら、合格最低点-1点で不合格、その後繰り上げ合格になったとしても、合格者の半数との差はせいぜい10点しかなく、算数の1問2問で簡単に逆転してしまう程度の差しかないということになります。実際の数字はわかりませんが、こんな感じなら実力差はほぼないと考えてよいのではと思えます。

深海魚にはしたくない

最近では二月の勝者で取り上げられたこともあり、深海魚という言葉もよく耳にします。ちょうどこんな記事がありました。

「補欠合格でも心配ない」はホント?…進学校で成績が低迷する“深海魚”問題の知られざる実状 | 文春オンライン
5月も終わり、受験を経て進学校に入学した中学1年生たちも、その学校に合うか合わないかが分かってくる頃だ。この時期に保護者たちが特に心配するのは、せっかく入った学校で子どもの成績が不振に陥らないか、とい…
深海魚
受験業界の用語で「深海魚」というものがある。進学校で勉強についていけず、深海に漂うような成績に低迷してしまう生徒を指す言葉だ。

親として最も心配になるのはコレですかね。せっかく希望の学校に入ったのに、勉強についていけず結局退学になってしまうというのでは、何のために頑張ったのかという気持ちになるでしょう。

ただ色々な話を聞いたり読んだりしている限り、入学試験の成績と深海魚になるかどうかにも相関はなさそうです。これは上の記事でも触れられています。

結論は

より上位の学校に入ることが良いことなのか、それとも無理せず実力相応の学校に入るべきなのかというこの問題、色々な記事をあたってみたものの、明確な答えはありませんでした。

深海魚になってしまう子というのは確かに存在するようですが、入学試験で下位の子がそうなるというロジックではなさそうですし、学校側が発信している、繰り上げ合格でも問題ないという言葉にも嘘はなさそうです。

ひとつだけあるのは、中学受験がゴールになってしまっていて、中学受験の終了と共に親子で燃え尽きてしまうケースは明らかに問題がありそう、というくらいでしょうか。

どの学校かより大事なのは学力レベル

これだけだと面白くないので、ここからは個人的な見解を書こうかと思います。

よく言われることに、難関校が進学実績が良いのは学力レベルの高い子を集めているからだ、というのがあります。例えば難関校が毎年東大に合格者を多数出しているのは、東大に入れる素質を持った子がたくさん集まっているだけの話だ、ということです。

何とも夢のない話ですが、これは一定の真実だと思います。入学時の偏差値と、出口となる大学合格実績にはある程度の相関があり、それ故に学校側も優秀な子に入ってもらえるよう努力をしているということです。

学校選びの際に合格実績などを見ていると勘違いしやすいので自戒を込めて書きますが、大学合格実績というものがそのまま我が子にもあてはまるわけではありません。例えば卒業生の半数が東大に入っている学校を見ると、この学校に入れば我が子も東大に入れるだろう、もしくは半分の確率ではいけるという謎のロジックを考えてしまいがちですが、その半数の中に本当に我が子が入れるのかは冷静に見る必要があると思います。

塾の模試では合格者の偏差値分布が公開されていたりしますが、例えば合格者が55〜70に分布している学校の場合、最上位と最下位では偏差値で15の差があることになります。合格者の全てが入学するわけではないので多少割り引いて考える必要はありますが、塾で偏差値55と偏差値70の子を比較すればどの程度の学力差があるかは感覚としてわかると思います。成長度の差として入学後にこの差は詰まる可能性もありますが、皆が同じカリキュラムに乗って同じように伸びていくなら序列は崩れないだろうし、むしろ努力できる上位の子がさらに伸びていく可能性の方が高いという考えの方が自然のような気がします。

そういう意味で、個人的には入る学校の偏差値よりも、自分の偏差値の方の目を向けることが大事ではないかと考えています。

6年生の後半〜終盤はさすがに合格に向けて学校に特化していきますが、それまでは総合的な学力(=偏差値)を上げることが、入学後も含めた長い目で見て最も重要だろうと思っています。

上の息子が中学に入学して再認識したのは、入学してからもしっかり勉強しないといけないんだよねという、ある意味で当たり前の事実でした。受験時にはあまりそこまで意識が向かなかったし、何となく入学してしまえば自然にどうにかなるのではと漠然と捉えていましたが、勉強しなければ当然ながら落ちていくし、周りのレベルが高ければ上位に入るのもそれなりに大変だというのは実感しました。

ということで、個人的には目指す学校に向けて実力を上げよう!というのが結論です。(実力相応派と言ってもいいですが、上を目指して勉強はしてほしいのでやや表現を変えました)

大学合格実績の見方

色々書きたくなってしまったので最後に少しだけ補足を。

結局、優秀な子は上位校に入ろうが中堅校に入ろうが出口は大して変わらないのでは、というのが今感じていることです。そういう意味では、学校の進学実績を見てあっちの学校がいいとかこっちはダメだとか言うのは、こと我が子の学校選択においてはほとんど意味がない気がしています。

ひとつだけあるとすれば、東大に合格者を出したことのない学校から東大を目指すとか、海外大学へ進学したことのない学校から海外大学を目指すといったケースは、学校にノウハウもなければ仲間もいないということになるのでなかなか厳しいかもしれません。そういう意味で、行きたい(行かせたい)進路がゼロというのは避けるというのがひとつのラインかもしれません。個人的には選択肢は多い方が良いと思っているので、色んな方面への進学実績を持っている学校が好きではあります。

また、東大に学年の半数近くが行く開成だと東大を目指すのが当たり前という雰囲気があるらしいので、学年全体の雰囲気としてどの辺りを目指す人が多いのか(東大、医学部、国公立、早慶、MARCH、海外など)を見る指標として進学実績を使うのがいいのかなと思います。

このブログでも、私個人の趣味もあって大学合格実績を煽るような記事を書くことが多いですが、ご覧になる皆様にはぜひ冷静な目で判断していただければと思います。

長々とお付き合いありがとうございました。何かの参考になればと思います。

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