もうひとつの東大合格者数ランキング

東大推薦合格者数ラインキング 大学合格ランキング

国公立大の合格発表があり、受験界隈では風物詩的な東大合格者ランキングで賑わっていますね。

そちらはそちらで盛り上がっているので、ここではもうひとつの試験である、東大推薦入試について取り上げてみようかなと思います。

東大推薦入試に通る子はハンパなく優秀という話も聞きますし、国立大学が推薦入試を推進している(推薦+AOで5割とか?)という話も聞くので(この辺の記事とか)、個人的に注目している指標だったりします。

良い機会なので本腰入れて東大推薦入試について調べてみました。本当は東大以外にも手を広げてみたいのですが、とりあえず他校のベンチマークにもなるであろう東大に絞って調査してみました。

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東大推薦入試?

推薦入試?それ私大の指定校の話でしょ?早く楽になりたいヤツが使うやつじゃないん?
という貴方は、我々のころの時代のままで時が止まっています。

いや、すみません、少し前までの私がそうでした。

時代は動いています。今や、ほとんどの国公立大学で推薦入試や総合型選抜(AO入試)が行われていて、この先はさらにその割合を増やしていこうとしているらしいのです。

種類としては学校推薦型選抜、総合型選抜などがあり(京大は特色入試と言っている)、学校によって高校の成績の要否、共通テストの要否など要件は異なりますが、従来型の一般入試以外での門戸を拡大していく方向では共通しています。

東北大は既に募集人員の3割が総合型選抜になっているらしいです。そうなってくるともはや無視できないところまで来ていますよね。

というところで、具体的に東大の推薦入試について見てみます。

東京大学 学校推薦型選抜

東大のホームページにある、学校推薦型選抜についての内容です。当初は推薦入試と言っていましたが、今は学校推薦型選抜と言うようです。

東京大学では、学部教育の総合的改革の一環として、多様な学生構成の実現と学部教育の更なる活性化を目指し、平成28年度入学者選抜から、日本の高等学校等の生徒を対象に学校推薦型選抜(旧推薦入試)を実施しています。

学校推薦型選抜(旧推薦入試)の概要

背景には、都市部の中高一貫校をはじめとする上位進学校からの学生が多数を占めるようになり、多様性が失われることに対する問題意識があるようです。

学力試験ではどうしても中高一貫の進学校が有利だったり、私立学校や塾などへお金をかけられる家庭が有利になるなどという現状があり、金銭的格差や地域格差による機会損失を減らしたい意図もあるそうです。

アドミッション・ポリシーの中で、期待する学生像として次の記載があります。

そうした意味で,入学試験の得点だけを意識した,視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも,学校の授業の内外で,自らの興味・関心を生かして幅広く学び,その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野,あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を東京大学は歓迎します。

東京大学学校推薦型選抜のアドミッション・ポリシー

必ずしも名門進学校の生徒がそうだと言っているわけではないものの、東大に受かりたい生徒ではなく、東大で学びたい生徒を取りたいというのが根本にある思想と捉えてよいと思います。

一方でこうも書いています。

学校推薦型選抜に当たっては、本学の総合的な教育課程に適応しうる学力を有しつつ、本学で教育・研究が行われている特定の分野や活動に関する卓越した能力、若しくは極めて強い関心や学ぶ意欲を持つ志願者を求めます。

東京大学学校推薦型選抜のアドミッション・ポリシー

要するに、一般入試で入る学生と同程度の学力を持ちつつ、尖った能力や強い意欲を持った学生を求めているということになります。超ハードル高いですね。

出願のきまり

学校推薦型となっている通り、各高校からこの生徒はおすすめですよと選抜されて推薦される方式です。そして、以下の決まりがあるようです。

  • 1つの学校から推薦できる生徒は4名まで
  • 男女はそれぞれ3名まで
  • 1学部への推薦は男女各1名まで

よって、男子校・女子校の場合は最大3名までが推薦枠ということになります。

なお、2020年までは男女それぞれ2名までだったのが拡大され、3名までになったとのことです。ランキングを見る際はその変更を踏まえてご覧ください。

そして、指定校との最大の違いは、落ちるということです。推薦されたら基本合格という訳ではなく、あくまで出願していい枠ということなので、校内を勝ち抜いて推薦枠を得た上で、更に推薦入試を戦うことになります。

スケジュール

書類審査と面接の2段階選考となっています。

第1次選考:書類選考(11月)→合格発表(12月上)

第2次選考:面接試験(12月中)・大学入学共通テスト受験(1月)→合格発表(2月中頃)

大学共通テスト受験は必須のようです。また一般入試との併願は可能なので、面接試験が終わったあとからは、一般入試に向けて普通に受験勉強する感じになるのかなと思います。

試験内容

一般入試のような科類(文一、文二、文三、理一、理二、理三)での募集ではなく、各学部からの直接募集となっています。

書類選考で提出するものは次の3つ。

  • 志願書(学部により様式が異なり、志望理由や検定・受賞歴、これまでの活動成果、入学後に学びたいこと、将来像などを論述)
  • 推薦書(学校がこの学生を推薦する理由などを具体的に記載)
  • 学部が求める書類・資料(TOEFL成績、〇〇オリンピック表彰状など)

当たり前ですが、ただ東大で学びたいから!とかではなく、これまでこんな活動をやってこんな成果を上げてきた、それを東大でさらにこうしていきたい、東大だからこうできるといったものを、論理的に、具体的に述べる必要があります。

さらに学校の先生にも同じく論理的な推薦書を書いてもらう必要があり、本人の資質ももちろんですが学校側の能力も問われる感じがします。

面接試験(2次試験?)の内容は、公表されているものは次の3学部。

  • 法学部:グループディスカッション
  • 文学部:文章読解と意見論述
  • 教養学部:小論文

このほか、プレゼンテーションや課題遂行を含む面接などがあるようです。

1次・2次をふまえた全体の印象としては、欧米型の入学試験に近い感じがしますね。知らんけど。

とりあえず、学業成績が良いのは当たり前で、課外活動や社会活動などでリーダーシップを発揮し、何かの分野で目立った受賞歴があり、文章力もあってプレゼンテーション能力も高い人、というのが該当しそうです。オソロシヤ。

合格者数

そんな東大推薦入試ですがやっぱりハードルは高いらしく、全学部合わせた募集人員は100名程度とされている中、一度も100人に達したことはありません。

2016201720182019202020212022
77人71人69人66人73人92人88人
年度ごとの合格者数

ただ、2021年からは推薦枠を増やしたこともあり合格者は100人に近づいています。昨年と今年はコロナ禍で活動が制限され成果を上げることが難しい中だったということで、100人を超えるのも時間の問題かもしれません。

東大推薦入試合格者ランキング(首都圏)

ではようやく本題に入ります。そんなスーパーな学生たちを輩出する学校を見たいと思います。

単年度だと人数が少なくランキングにならないので、制度が始まった2016年からの合計人数でのランキングになります。また、一応首都圏の中学受験がこのブログのメインテーマなので、一都三県の学校に絞らせていただきました。(全国だと学校数が多すぎて手が回らず、、、すみません)

ネットから拾い集めてきた情報なので、間違いがあったらすみません、ご指摘ください。

#学校名2016201720182019202020212022合計
1渋谷教育渋谷121221312
1日比谷211222212
3市川112228
3海城1111228
3筑波大附属22228
6麻布111317
7渋谷教育幕張21216
8江戸川学園取手111115
8開成111115
8聖光学院11125
8広尾学園21115
12浦和第一女子11114
12栄光学園11114
12桜蔭11114
12お茶の水女子大附属1124
12学芸大附属2114
12国際基督教大学附属1124
12桐蔭学園中教11114
12本郷11114
緑は共学校青は男子校赤は女子校を表します

1位は同数で渋渋と日比谷でした。

そもそも1つの学校から受けられる受験者数の上限があるので差が付きづらいランキングですが、それでも渋渋と日比谷が頭ひとつ抜けて2強という感じです。この2校だけは初年度から欠けることなく毎年合格者を出し続けています。

渋渋は(渋幕もですが)SGHやWWLなどグローバルな取り組みや自調自考論文など、教養的な取り組みを学校側が用意してくれていて、生徒の優秀さとも相まって成果を出しやすいのかなと思います。

日比谷はそもそも高校受験時に推薦入試と同じような高いハードルがあるので優秀な人材が集まりやすく、さらにSSHなどによって成果を出しているということかなと思います。

続く3位は、これも同数で市川、海城、筑附でした。

市川はSSH指定校でかつリベラルアーツ教育に積極的、海城も社会科論述やKSプロジェクトなど教養的な取り組みがあり、筑附もSGHだったり小学生時からも優秀な子が入っているなど、やはり共通しているのはリベラルな取り組みに積極的な学校であり、そこに優秀な生徒が入学してくるという点かなと思います。

以下、6位に麻布、7位に渋幕、8位が江戸川学園取手・開成・聖光学院・広尾学園と続きます。

東大合格者ランキングでも上位の顔ぶれの学校が多く、優秀な生徒も多いので、推薦枠が広がったこともあり今後も一定数の合格者は出し続けるのかなと感じます。特に男子校・女子校は数の上では不利だったので、2021年の麻布のように推薦枠の全員が合格したりするとそれなりのインパクトが出ると思います。

なお、首都圏以外で人数が多かったのは(調べられた限り)、秋田(9名)、西大和学園(7名)、県立長野(6名)、岐阜(6名)、灘(6名)などで、西大和や灘は東大合格者ランキングでもトップ10に入る学校ですが、それ以外はその地方で一番手の公立進学校が多い印象でした。

まとめ

以上、東大推薦入試(学校推薦型選抜)を見てきました。

推薦入試に絞ってみてみると、通常の東大合格者ランキングとは違った面が見えてくると思います。

ここからは私個人の雑感です。共感されない方はスルーしていただければと思います。

推薦入試ランキングから見えてくること

推薦入試では、その学生が高校時代に何を考えどんな活動をしてきたかが評価されるため、どの学校に通っているかよりも個人の資質が問われるはずです。

しかし、合格者を多く出している学校が存在していることもまた事実で、高校時代にどんな経験を積むことができるかという点においては、学校が果たす役割はむしろ大きくなっているのではと感じます。

ここには塾が介入する余地も多くはないため、その学校自体の教育に対する考え方がよりダイレクトに反映されるという見方もできるのではと思います。

学校側に推薦書を書くパワーも必要なので、学校が力を入れてくれないとそもそも通らないというのもあるかもしれませんし、まあそれも含めて学校の姿勢が見えるのではと思いました。(東大だけではなく他大学もあわせて見てみたいとは思いますが)

あくまで私個人の勝手な想像にしか過ぎませんが、ひとつのものの見方として捉えていただければと。

大学入試のこれから

最近は国公立大も推薦やAOが増えてきたらしいというのは何となく耳に入っていて、雑誌記事などもチラチラと見てはいましたが、調べていくとこれは想像以上の大きな動きではないかと感じました。

学習指導要領改訂や大学入試改革ほど取り沙汰されませんが、特に、上限という記載ながら5割までを推薦やAOにするという数字の目安が出ているのは、今後の受験の流れを考える上で大きなインパクトがあります。

2016年に始まった東大推薦入試も、5年経過した2021年に推薦枠を拡大する方向で見直されましたし、私大トップの一角である早稲田大学がAO・推薦入学者を6割にするというニュースもありました。

今年中学へ入学する息子たちが大学入試を迎えるのは6年後、あと6年もあればこれがさらに加速していても何ら不思議はありません。

高校入試は既にそういった流れを先取りするかたちなっていて、まずは推薦入試を検討した上で一般入試も受けるというのが主流のようです。都立高校は定員の2割程度が推薦入試になっているようなので、このくらいの数字になると流れが変わりそうです。

推薦やAO入試の是非については一旦置いておいたとしても、学校教育がどこを目指してどう変わっていこうとしているのかを把握し判断していくことは大事かなと思います。

大学側の狙い

そもそも論としては、日本が国際競争を戦っていく中で、レジャーランド化した大学(昔よりましな気はしますが)を何とかしないといけないというところが出発点で、大学に合格することがゴールになってしまっている今の教育システムを正すべきという世論からの流れではあると思います。

私の親戚に今年、私の出身校でもある田舎の公立高校から、地元とは離れた地方国立大学に推薦で合格したという子がいます。優秀な子なので、最初に学校名を聞いた時の私の反応は「なんでそこ?」あるいは「もったいない」でした。

しかし話を聞いていくと、やりたいことが明確にあって、その大学にはその道で有名な教授がいて、そこで勉強をしたいから選んだという話でした。(他人の話なんで曖昧な表現ですみません)

どっぷりと偏差値社会に毒されてしまったジジイにはすぐには理解できなかったことですが、優秀な若者はすでに次の時代の価値観で生きているというのを実感させられた出来事でした。

やりたいことがあるから大学に行く、良い先生の元で学ぶために大学を選ぶ、おそらくこういう動きこそが大学側が求めているものであり、広く言えば社会が求めているものだろうと思います。

そしてその準備段階として高校・中学が存在しているとすれば、この6年間の過ごし方は非常に大事だなと改めて感じます。

旧世代の人間としては、そうは言っても大学合格者ランキングなどで序列化されたものを見るのは楽しいので、たぶんやめられないとは思いますが、志のある若者を応援していく後押しはしてあげたいなと思ったりはします。

以上、参考になればうれしいです。

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