算数ができる・できないを分けるもの

算数できる?できない? 動画・書籍レビュー

PIVOTというYouTubeチャンネルで、はなまる学習会の高濱代表の動画がありました。高濱先生は有名人でテレビにも出演したりしているので、話を聞いたことがある方も多いと思います。今回は話の内容というよりも、この動画の中でひとつ面白いやり取りがあったので、そこに絞って話を進めていきたいと思います。

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動画の内容

動画は30分ずつ前編・後編に分かれています。

今回のテーマとして設定されているのは次の4点です。

  1. ニューエリートに必要な2つの学力:基盤となる学力とその上に積み上げる思考力
  2. 入試と社会で役立つ「思考力」
  3. 究極の「叱り方」を極めよ
  4. オルタナティブ教育の可能性

ただ、テーマがどうこういうよりも、2人からのQ&Aを中心に話されている内容が非常に面白いので、特に幼少期〜低学年あたりの子育てに興味がある方は時間があるときにでもぜひ見てみるといいんじゃないかなと思います。ここでは動画の内容にはあまり触れません。

算数ができる人・できない人

さてここからが本題です。まずは後編の動画を、前半部分だけでもいいんで見てください。

高濱先生が用意した算数の問題を、番組のホスト役である国山ハセンさんと岩崎由夏さんが解くところです。

問題はこの2問。

せっかくなので、ちょっと解いてみてもらえればと思います。いや、解かなくてもいいので、ちょっと問題を見て考えるだけでもやってみてください。

ちなみにここでは、この問題がどうこうとか解き方について掘っていくつもりではないです。この2人それぞれの反応から考えることがあるなあということを体感してもらえればと思います。

結果として、2人とも解くことはできませんでした。まあ入試レベルの問題なので、中学受験経験者だったり、いま自分で子供に教えたりしている親御さんでない限りは普通そんなもんでしょう。

で面白いのはこのお2人のコメントです。見てみましょう。

ハセンさん:「ダメなんだよね、算数」「問1は捨てた」「見た瞬間に問2しかやる気がなかった」「もう こういうのは無理」「こういうのは苦手意識がすごい」

岩崎さん:「こっちが絶対に簡単だというのは先に分かる…」「やばい、基礎の基礎を忘れている」「面白い… 全然分からない」「言い訳ですけど、私小6だったら解けてますね」

反応にだいぶ違いがありますよね。

算数に対して苦手意識のあるハセンさんと、中学受験の経験があって昔は解けたはずと思ってやっている岩崎さんという対比が面白いです。ちなみにみなさんはどちらに近いでしょうか。

ハセンさんの方は、問題を見ただけで「苦手だ」「嫌だ」と最初から腰が引けていました。一方で岩崎さんの方は「できる(できた)はずだ」と思って問題を見ています。

さて、この2人が仮に小学生だったとして、ここから一緒に算数の勉強をスタートしたらどちらが伸びると思いますか?

念のため補足しますが、ハセンさんがダメだとか反面教師だとか言っているわけではないです。単に「算数ができるようになる」ということを考えたときに、どっちができそう?というだけの話です。

大事なのは問題に向かう姿勢

さてこの2人の態度の違いはどこから来るんでしょう。

おそらく、それぞれ問題に向き合ったときのイメージを言語化するとこんな感じでしょうかね。

ハセンさん:自分は算数が苦手→自分には解けない可能性が高い

岩崎さん:昔の自分は解けた→自分なら解ける可能性が高い

好きとか嫌いとかいう以前に、潜在意識としてこういうイメージがあると考えられます。(わかりやすいようにハセンさん・岩崎さんと書いていますが、算数が不得意と思っている人、得意と思っている人と置き換えて考えてください)

今どきの中学受験算数は、大人が見てもパッと解き方や答えが分かるような単純な問題はあまりなく、頭をひとひねりしないと解き方の糸口も見つけられない問題がほとんどです。これは決して入試問題レベルだけの話ではなく、4年生からこんな問題がいくらでも出てきます。

そういう問題に「自分には解けない可能性が高い」と思ってぶつかれば、ある程度考えてわからなければ諦めてしまう可能性の方が高いでしょう。一方で「自分なら解けるはずだ」と思って取り組むと、パッと見でわからなくてもどこかに突破口があるはずだと試行錯誤することになります。

また今回のように問題が解けなかったときに、ハセンさんタイプであれば「ほら、やっぱり」と潜在意識を肯定することになり、岩崎さんタイプであれば「何で、くやしい」と現状を変えたいと思う力が働きやすくなります。

これこそが算数の力を分けている分岐点で、これの積み重ねが算数の学力差であると私は捉えています。

つまり、算数のできる人・できない人の差は、自分のポジションを「問題が解けない」方においているか、「問題が解ける」方に置いているかの違いであると言い換えられます。

もちろん本人の持って生まれた素質やこれまで積み上げたものもあっての今の学力ではあるでしょうが、その学力の伸ばしやすさという点で、とても大事な視点ではないかなと思っています。

じゃあどうすればいいのさ

とまあ、思ったこと、言いたかったことは本当はここまでなんですが、さすがにこれだけだと「で?」という話で、「それができるなら苦労してないわ!」というツッコミも聞こえてきそうなので、もう一歩踏み込んで考えてみます。

算数が得意だと思っているという意識はどこから来るのか。それは、

「解けたという体験」と「周りよりデキている意識」

という2点だと思います。

解けたという体験

ひとつ目のこれは分かりやすいですが、中学受験勉強では意外にこれが難しかったりします。大手塾のカリキュラムはどんどん前倒しされ上位生に向けたものになっていて、4年生のテキストにも平気で入試レベルの問題が掲載されているのが現状です。組分けテストや模試なども、偏差値を出さなければいけない関係上、全問正解が続出するわけにはいかず難しい問題が入ってくるので、いずれにしても、全部解けた!なんていう状態はほぼ現実的ではありません。

「解けた!」という体験と「解けなかった」という体験、基本的にはこのどちらも味わうことになりますが、少なくとも解けなかった体験の方が多ければ、自分は不得意なんだと思ってしまう可能性が高くなりますね

それを避けるためには、いまの力で解ける問題を中心に与えていくというのが大事になるでしょう。ただ塾テキストには基本から応用・発展まで全レベルの問題が載っているので、誰かが目利きしてあげる必要がありますね。同じお金を払っているなら全部やりたくなるのが心情ですが、そこはグッとこらえて適正なラインで切るのが必要、というのはおさえておきたいです。

周りよりデキている意識

2点目ですが、人間は社会的な動物だから、なのかどうかはわかりませんが、他人と比べて相対的に出来ていれば、やはり自分はそれが得意だという感覚になりやすいですね。

塾のクラスが一番上とか、偏差値が70だ、とかであればきっと得意だと認識するでしょう。

いやそりゃそうだろうけど、そんなこと言ったって、塾のクラスや偏差値なんてそんな簡単に上がるものじゃないというのは、少しでもカジったことがある人なら分かってもらえると思います。それが簡単にできるなら苦労しないですね。

で、だったらどうするかなんですが、それは、

自分が上位になる母集団に入ればいいんじゃないか

ということです。

勝手にこれをお山の大将効果と呼んでいますが、どこでもいいんでお山の大将になるという経験が、自分に自信をつけさせるには最も効果があると思っています。

マンガ「二月の勝者」でも前田花恋が他塾へ移籍しようとして結局戻ってきたエピソードがありましたが、自分が女王になれる母集団というのは、負けん気の強い彼女に限らず重要な気がします。

そのために塾を移るというのももちろん有効だと思いますが、別に塾環境にこだわらなくてもいい気がします。例えば親や兄弟などと一緒に問題をやってみて、家族内で一番になるというのでも効果はあるんじゃないでしょうか(親がいい感じでキチンと負けてあげる姿勢は必要ですが)。

また、ある程度のレベルになるまでは他人との比較環境には置かないというのもひとつのやり方かなと思います。個人塾や通信教育などでコツコツ積み上げていくのも個人的にはアリじゃないかと思います。そしてたまに過去にやったテスト問題などに戻って、成長している自分に気付くというのもいいんじゃないですかね。

我が家の方針

というところで振り返って我が家の話ですが、下の子は小2になりました。去年こんな記事を書きましたが[小1次男の様子と猛反省]、これは最悪ですね。

とりあえずいまは「ぼく算数苦手」という状況は克服したものの、得意だと勘違いするところまでは行けていないです。ただ、だいぶ私が反省したので、もう思考系のドリルとか(きらめき算数脳とか宮本算数教室とか)難し目の問題を与えるのはやめました。無理にやらせてもいいことはないと悟ったので、算数は学校とほぼ同じ進度のチャレンジタッチを毎朝のルーティーンにするだけにしています。

ベネッセも含めですが、色んなところから色んな情報(営業)が入ってきて、あれもこれもと色んなことをやらせたくなる、というよりやらないことに対する不安を煽られることが多いですが、逆に子供を枠にハメたり時間を奪うことのマイナス面にも目を向けながら、やり過ぎないというのが現代の子育てには必要なんじゃないかなと、動画を見ながら考えたりしました。

あとはどうやってお山の大将にするか、かなぁ。

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