なぜ中学受験するのか(付属校編)

なぜ中学受験するのか 受験校選びのTIPS

中学受験について、主に大学への進路という視点で、高校受験と比較しての違いや良さについて考えています。

なぜ中学受験するのか
  1. 進学校編
  2. 付属校編(この記事)

前回記事(進学校編)では、大学受験することを前提としたときの進学校について比較しました。今回はもうひとつの方向性である付属校について考えたいと思います。

[AD]

私立大学付属校

中学受験をする理由として、私大の付属校に入りたいというのはもう一方向の大きな軸だと思います。特に大学入試改革の混乱や私大入学定員の厳格化などにより、ここ数年は過熱気味と言われるほど付属校が人気です。

どこかの本で付属校は高校受験が有利というのを読んだ記憶があり、それを確認すべくそれぞれの受験での定員の数を調べてみました。小学校(一部幼稚園も)、中学校、高校それぞれでの募集定員を見て考察してみたいと思います。

偏差値や難易度は一概には比較できないのであくまで定員数から見るだけですが、興味深いデータではあるのでご覧ください。

全ては調べきれないので、首都圏でひとつの目安というか目標校となるであろう、早慶とGMARCHに絞って出してみます。

なお、各段階に上がるときの定員数には内部進学者は含まず、外部募集の定員となります(例えば小学校で100人、中学で100人であれば中学では1学年200人になるという意味)。小学校から中学校、中学校から高校へ上がる際に外部に出る人は誤差として無視しています。

また、男女の定員数を出す際、共学校では男女分けをせずに募集している学校も多いのですが、男女比の違いを見たいので、この場合は便宜上半数ずつに分けて集計しています。

慶應義塾大学

慶應の付属校と募集定員は以下の通りです。(各段階での定員に内部進学者は含みません)

男女男子女子推薦帰国生
小学校:252名(男子162名、女子90名)
幼稚舎 96名48名  
横浜初等部 66名42名  
中学校:470名(男子370名、女子100名)
普通部(男子) 180名   
中等部(共学) 140名50名  
湘南藤沢中等部(共学)70名   30名
 高校:720名(男子610名、女子110名)
慶應義塾高校(男子) 330名 40名若干名
慶應志木高校(男子) 190名 40名若干名
慶應女子高校(女子)  80名20名若干名
湘南藤沢高等部(共学)若干名若干名  20名

このほかに慶應ニューヨーク学院がありますが、入学時期の違いもありここでは省きます。

大学定員:約6400名(うち内部生約1450名)

大学定員の1/4が内部生で、残りが大学入試で入ってくることになります。内部生割合は今回挙げた学校の中では最も多くなっています。

中学よりは高校の方が人数は多いですが、そんなことよりも男女比が大変なことになっていることが気になります。男子校が多いのと共学でも男子の定員が多いことなどから、全校合計で男子が1142名に対し女子が300名と、4倍近い差があります。女子にはかなり狭き門だということがわかります。

中学受験で中等部と湘南藤沢(以下SFC)は日程がズレているので併願はできますが、問題傾向がかなり違うので対策が難しいのと、どちらも人数が少ない(合格者数でも中等部女子は100名強、SFCは男女合わせても100名弱)ので大変です。高校受験でもSFCは帰国生と全国枠入試のみのため実質的には慶應女子の一択となり(合格者数150名程度)、中学入試も高校入試もかなり厳しい入試だと言えると思います。

男子は中学受験でもそこそこの枠がありますが、さらに高校受験では2校合わせて610名の枠があり、しかも入試日程的にも両方が受けられ推薦と合わせれば3回受験できるので、後述する早稲田も含め、女子に比べるとかなりチャンスが大きいと言えると思います。

早稲田大学

早稲田は付属校と系属校がありやや複雑です。とりあえず首都圏の学校で表にすると次の通りです。

男子女子推薦(男女)推薦(男子)推薦(女子)帰国生
小学校:108名(男子72名、女子36名)
早稲田実業初等部72名36名    
中学校:380名(男子340名、女子40名)
早大高等学院中等部(男子)120名     
早稲田実業中等部(共学)70名40名    
早稲田中・高(男子)*150名     
 高校:770名(男子598名、女子173名)
早大高等学院(男子)260名  100名  
早大本庄高等学院(共学)100名70名 45名30名45名
早稲田実業高等部(共学)50名30名40名  若干名
*早稲田中高の定員は300名ですが、早稲田大学へ推薦枠は約半分なので150名と置いています

これ以外の系属校として、早稲田摂陵高校(中学募集は停止、早大推薦枠55名)、早稲田佐賀中・高(推薦枠100名程度)、早稲田渋谷シンガポール校(推薦枠80名程度)があります。

大学定員:約9000名(うち内部生約1500名)

首都圏以外の3校を含んだ内部生定員が約1500名、大学定員の1/6が内部生という感じですかね。

こちらも慶應と同じく男女差が激しいです。表に挙げた首都圏の学校で考えると、男子が1010名、女子が249名となりやはり4倍程度の差があります。特に小学校(初等部)、中学校(中等部)の女子はそれぞれ1クラス分程度しか採らないので、ここはかなりキツそうです。高校は少し間口が広がりますが、早稲田本庄だと場所の問題もあるでしょうし、合格者数でも本庄で250名程度、早実は80名弱しかいないので狭き門であることに変わりはなさそうです。

一方で男子の場合は、高校入試なら3校合わせ定員で600名弱、合格者数では1300名を超え、入試日程的にも推薦+3校で4回チャンスがあったりするので、かなり受験しやすいと思います。中学受験の場合は、早稲田中の実際の定員が300名(合格者は500名超)あるので男子はやはり有利と言えそうですが、早稲田中の第2回入試以外は入試日程が2月1日に集中しているので高校受験ほどのお得度は感じられません。まあそれでも女子に比べるとはるかに恵まれていますが。

明治大学

明治大学には付属の小学校がなく、中高が3校あります。

男女男子女子推薦(男女)推薦(男子)推薦(女子)備考
中学校:550名(男子395名、女子155名)
明大明治(共学) 75名75名
明大中野(男子) 240名
明大中野八王子(共学)160名
高校:415名(男子290名、女子125名)
明大明治(共学)30名30名 20名20名9割が明治大へ進学
明大中野(男子)* 105名  60名 8割が明治大へ進学
明大中野八王子(共学)75名  75名  9割が明治大へ進学
*明大中野は2023年度より推薦入試枠を拡大し60名になるとのことです

大学定員:約7800名(うち内部生約1000名)

大学定員の1/8が内部生ということでやや大学入試の枠が多めな感じです。

男女比に関してはここもやはり男子が多めですが、共学校の男女比は同じなので、単純に男子校の明大中野の分だけ男子枠が多いということですね。早慶ほど極端な男子有利というわけではなさそうです。ただ明大中野八王子は都内からはだいぶ離れていて通える家庭も限られるので、選択肢が明大明治だけになる女子にはやや厳しいということになるかもしれません。

中学受験と高校受験だと中学の方が枠が多めなので、明治系の付属をメインに考えるなら中学受験の方がいいのかもしれません。

ちなみに先日、明治大学が日本学園を系列化し明治大学付属世田谷中・高とするというニュースがありました。来年度(2023年)の中学受験生が卒業する年から明治大学への推薦枠が与えられるとのことで、内部生は増える方向ですね。

青山学院大学

青学も近年動きが激しい学校で、昔からの青山学院に加えて横浜英和と浦和ルーテル学院が系列に加わっています。

男女男子女子推薦(男女)帰国生備考
小学校・幼稚園:188名(男子94名、女子94名)
青山学院幼稚園20名20名
青山学院初等部44名44名
横浜英和幼稚園30名
横浜英和小学校30名
中学校:260名(男子130名、女子130名)
青山学院中等部(共学)140名
横浜英和(中高・共学)120名6〜7割が青学大
高校:180名(男子90名、女子90名)
青山学院高等部(共学)80名70名30名8〜9割が青学大

浦和ルーテル学院も2019年より青山学院の系属校になりましたが、2030年度に高校を卒業する生徒(現小学4年生、2025年度の中学入試学年)からが推薦入学の対象で、それまでは経過措置として一定の募集枠の範囲内で入学ができるとのことなので、ここでは母集団には入れていません。

大学定員:約4500名(うち内部生約600名)

大学定員の1/7が内部生という感じです。

全ての学校が共学で男女比も全く同じということで、男女格差はないと言っていいでしょう。

ただ、幼稚園・小学校は言うに及ばず、中学も高校も(大学も)定員は少ないので、どこから入るにしても狭き門ということは言えそうです。横浜英和がある分だけ中学受験の間口がやや広いと言えるかもしれませんが、横浜という立地面で受験生も限られるし、本家の青学附属で考えると高校入試の方が枠が大きく推薦入試もあるので微妙なところですね。

また偏差値的に見ると、中学受験でも高校受験でも男子は低めで穴場と言われたりするので、ここでも男子がやや有利かもしれません。

立教大学

立教の付属校には男子校しかないのですが、女子校の系属校が2校あります。共学校はありません。

男子女子推薦(男子)帰国生備考
小学校:120名(男子120名)
立教小学校(男子)120名    
中学校:540名(男子220名、女子320名)
立教新座(男子)140名    
立教池袋(男子)70名    
立教女学院(中高・女子)* 150名 20名6〜7割が立教大へ(枠は151名/180名中)
香蘭女学校(中高・女子)* 160名  半数が立教大へ(枠は97名/160名中)
高校:80名(男子80名)
立教新座(男子)60名 20名 8〜9割が立教大へ
立教池袋(男子)若干名   9割が立教大へ
*立教女学院と香蘭女学校は推薦枠の分を定員として数えています。

このほか、立教英国学院(推薦枠40名程度)があります。

大学定員:約4800名(うち内部生約750名)

大学定員のうち1/6.5が内部生という割合です。

男女比は420名:320名と、それほど大きな差はありません。ほぼ小学校(男子校)の人数分だけ男子が多いという感じです。ただ、女子は高校募集がないので、中学入試で系属の2校に入っておく必要があります。男子も高校受験だと立教新座の60名しか枠がないので、中学受験がメインの主戦場にはなりそうです。

中央大学

中央大学は付属の小学校はなく中学と高校のみです。

男女推薦(男女)推薦(男子)推薦(女子)帰国生備考
中学校:260名(男子130名、女子130名)
中大附属(共学)100名若干名
中大附属横浜(共学)160名
高校:590名(男子295名、女子295名)
中大附属(共学)120名80名  若干名9割が中央大へ
中大附属横浜(共学)70名30名7割が中央大へ
中大杉並(共学)150名20名9割が中央大へ
中大高校(共学)70名25名25名9割が中央大へ

大学定員:約6300名(内部生約850名)

大学定員の約1/7が内部生という感じです。

こちらも青学と同様に全ての学校が共学で定員の差もなく、男女格差はなさそうです。

中学受験は中大附属と中大附属横浜の2校、高校受験だとこれに2校プラスされ4校で募集があり、高校受験の方が募集枠が大きいです。中大附属も高校の方が定員が多く推薦入試もあるので、高校受験の方が狙いやすそうです。

ちなみに中大附属と中大附属横浜については、中央大への推薦権を保持したまま他大受験が可能というのもあってか、近年人気が上がっていますね。

法政大学

法政も中学と高校のみです。

男女男子女子推薦(男女)推薦(男子)推薦(女子)帰国生備考
中学校:350名(男子210名、女子140名)
法政大学(共学)140名
法政第二(共学) 140名70名若干名
高校:787名(男子446名、女子341名)
法政大学(共学)52名 40名8〜9割が法政大へ
法政第二(共学)70名55名180名90名 9割が法政大へ
法政国際(共学)60名  210名30名9割が法政大へ

大学定員:約6500名(うち内部生約1100名)

大学定員の約1/6が内部生という感じです。

全ての学校が共学なのですが、法政第二だけ男子校だった流れか男女定員の差があり、その分だけ男子枠が多いです。

高校では3校になり800名近く採るので、高校受験の方が狙いやすそうです。特に法政第二と法政国際の推薦枠が大きく倍率も1.0倍(事前調整型?)なので、出願できれば合格するということで受けやすいと思います。

なお、法政と法政国際は法政大学への推薦権を保持したまま他大受験が可能ということでした。

学習院大学

学習院は幼稚園〜高校までいわゆる学習院の付属校のみ、系列校や共学化を進める他の学校に比べると動きはほとんどない感じですね。

男子女子帰国生備考
小学校・幼稚園:132名(男子66名、女子66名)
学習院幼稚園26名26名
学習院初等科40名40名 
中学校:285名(男子140名、女子145名)
学習院中等科(男子)125名15名
学習院女子中等科・高等科(女子) 130名15名6〜7割が学習院
高校:20名(男子20名)
学習院高等科(男子)20名5〜6割が学習院

大学定員:約2000名(うち内部生約3〜400名)

大学定員の1/5〜1/6が内部生という感じです。

中学からは男子校、女子校と分かれますが、男女の定員差はほとんどない感じです。男子のみ高校募集がありますがわずか20名で推薦入試もなしなので、高校受験におけるプレゼンスはほとんどなさそうです。付属に入るなら中心は中学受験ということになりそうです。

他の学校に比べて大学の定員が少ないですが、内部進学割合もそれほど多くないというのが特徴的に感じます。

まとめ

以上、早慶とGMARCHと呼ばれる学校群の付属校を見てきました。一括りにされることの多いこれらの学校ですが、調べてみると色々な違いがあることがわかります。ざっと分類してみると以下の感じです。

  • 中学受験の方が枠が多い:明治、立教、学習院
  • 同程度:青山学院
  • 高校受験の方が枠が多い:慶應義塾、早稲田、中央、法政

これを見ると、付属校が必ずしも高校受験偏重という訳ではなさそうです。

ただ、ただ総じて言えそうなのは女子には厳しいということでした。男女で差がないと言えるのは、青山学院、立教(小学校以外)、中央、学習院くらいでしょう。この4校も入試難易度で考えるとまた微妙なところがあります。

歴史的な経緯で、戦前に男子向けの教育機関だった大学がそのまま上位校として残ったというところから考えると仕方のないことなのかもしれませんが、今の世の流れからすると違和感を感じます。特に早慶の男子偏重は、私学トップという今の立ち位置から、もう少し考えてもよくない?と思ってしまいます。まあ個々の学校に意見するのが目的ではないのでここまでにしておきますが。

このブログでは現状を分析して受験戦略の材料にすることが目的なのでその視点で見ていくと、早慶が最も顕著ですが、男子の高校入試が比較的受けやすそうというのがわかります。現在の高校入試では公立も私立も最初に推薦入試を行うところが一般的で、それは付属校も例外ではありません。受験のチャンスが複数回あるという点からも高校受験のメリットはありそうです。(まあ人数が多い=難易度低いというわけではないので実際の難しさは知りませんが)

一方で、女子はきついですね。特に高校受験の女子は、枠も少ない上に高校募集自体がない学校も多いです。何といっても早慶の女子募集が致命的に少ないことが最大のポイントですが、青学、中央、法政くらいしか高校受験でそこそこ人数を取ってくれそうなところが見つかりません。その意味では、女子は中学受験しておいた方が良いのではという結論になりそうです。

さいごに

大学受験と内部進学という2つの面から、中学受験と高校受験について見てきました。前回記事と合わせて見ていただければと思います。

上にも書きましたが、ひとつだけ思うのは、女子の高校受験は大変そうだ、ということです。我が家は男子2人なんで他人事ではありますが、それでもちょっとこれは不公平ではと思ってしまいます。

ここ10年くらい上位の私立進学校が高校入試を撤退するという流れがあり、男子校も女子校も高校受験できる進学校の数は減っています。男子校はそれでも、筑駒、開成を頂点に、桐朋、巣鴨、城北などまだいくつか残っています。一方で女子校は豊島岡の撤退を最後に、唯一国立のお茶の水女子大附属だけが残るという感じです。

あとは共学校ですが、国立の2校(筑波大附属、学芸大附属)、私立なら渋幕、市川、広尾学園、栄東などの中学受験でもお馴染みの難関校が上位生のターゲットになるんでしょうか。ただこの辺りは中学受験より定員が1/3だったり少ないところがほとんどなので難易度は高そうです。

実際に受験生を想定して考えてみると、日比谷も早慶も取ってこれるくらいの超トップ層なら別ですが、その次クラスあたりからは併願戦略がきつくなりそうです。上に挙げた共学進学校も私大付属校も狭き門で併願校にするにはややチャレンジ感が出てくるので、もう少し手広く抑えておきたい感じです。そして、そうやって上から玉突きで受験校が降りてくる結果、中堅校受験生くらいまで厳しめの競争になることが想像できます。

少し前に都立高校受験の男女別定員の問題がニュースになっていましたが(女子受験生に不利な都立高入試の男女別定員制、見直しへ。など)、もっと根本的に、私立も含めた受験全体で女子が不利という現実があって、この問題もそれ対しての不満から来ているのではと思うのですがどうなんでしょうか。

まあちょっと話が男女差の方向にズレていってしまいましたが、ここまでの話を個人的な見解としてまとめると次の感じですかね。

  • 大学受験を考えた場合、中学受験をして進学校へ進むメリットは大きい
  • 男子で難関私大を目指すなら、高校受験で狙うのも悪くない
  • 女子なら中学受験しておきたい

経済的な面で誰でもという訳にもいかないのが中学受験ですが(でしたが)、ネットを使って学習環境さえ整えれば塾なしでもやれる世の中になってきたし、公立中高一貫校という存在もあるので、私はやはり中学受験派です。中学受験した上で高校受験にまわるというのも選択できますし。

まあ主観的な話はさておき、今回のデータが受験を考える際の何かヒントになれば幸いです。

以上です。

コメント