順天学園が北里大学との同法人化を発表

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11月29日、またひとつ大きなニュースが発表されました。

順天中学校・高等学校を設置する順天学園と、北里大学・大学院等を設置する学校法人北里研究所と法人合併を目指した協議を開始することについての基本合意書を締結したとのことです。内容はこちらです。

学校法人順天学園の法人合併(基本合意書締結)のお知らせ | 順天中学校・高等学校
今般、創立190周年を迎える本学園は、順天中学校・高等学校を設置する学校法人順天学園と、北里大学・大学院等を設

一部抜粋します。

両法人は2026年4月1日(令和8年度)に合併することを目指しており、合併後、「順天中学校・高等学校は学校法人北里研究所が設置する学校となる」こととしております。
<中略>
法人合併後も、校名「順天」の2文字が継承されることや、中学高校の所在地をはじめ、教職員も継承されることとなっており、国立大学や海外大学、文系・国際系など私立他大学への進学指導も継承されます。また、令和8年度より、附属としての高校から大学への内部進学が開始される見込みです。その間に最終的な合併締結を経て、内部推薦の条件なども決定していくこととしております。

出典:順天中学校・高等学校 学校法人順天学園の法人合併(基本合意書締結)のお知らせ

順天中学校・高等学校という名前は残しますが、学校法人が北里研究所となり、「附属として」内部進学が開始されるということです。内部進学の規模感がわからないのでまだ何とも言えませんが、医学部を持つ大学、しかも有名な北里柴三郎の名前を冠した大学への内部進学がある学校ということで、注目度は高そうです。

順天中学校・高等学校って?

順天中学校と聞いて、順天堂大学の附属?と思う方も少なくないと思います。というか少し前の私がそう思っていました。そう思ってこのニュースを見るとなんのこっちゃわからなくなります。順天堂大学と北里大学の合併?みたいな。

実際は「順天堂大学とは全く関係がない(出典:Wikipedia)」です。

順天学園は、1834年(天保期!)に福田理軒という数学者が大阪に設立した「順天堂塾」が発祥とのことです。
一方の順天堂大学は、1838年(同じく天保期!)に佐藤泰然が蘭方医学塾を開設し、その5年後に医学塾を「順天堂」と命名したことが発祥となっています。(それぞれ学校WebサイトとWikipediaより)

ということで、たまたま「順天堂」という名前が被っただけで関係はないとのことでした。ちょうど設立時期が同じ頃だったことから考えると、開智学校や開成学校などと同じく、命名した当時に流行った名前だったのかもしれません。

で、その順天中学校・高等学校ですが、調べてみたら非常に面白い系譜を辿った学校でした。発祥が江戸時代というのは先に書いた通りですが、明治期に旧制中学の男子校となり、戦後の学制改革で中学校・高等学校となったというのは伝統校にはよくある流れです。ただその後、運営困難となり1961年に休校、そして1962年に順天高等学校が女子校として再開されたらしいです。そして1990年に共学化、1995年に中学校が開校し今に至るということで、元々の男子校が女子校になってさらに共学校になったという、変わった変遷を遂げた学校のようです。

一度休校になり女子校になったということで、それまでの伝統はそこで一度リセットされて再スタートになっているわけです。にもかかわらず、と言ったら失礼かもしれませんが、偏差値を見ると四谷大塚で45前後、首都圏模試だと60近くに位置しているので、それなりの評価を得てきたと言えるのではないでしょうか。

ちなみに2023年の大学合格実績は以下の通りでした。(出典:順天中学校・高等学校 進学情報

  • 国公立大28名(現役24名):名古屋大1名、九州大1名、筑波大3名、東京学芸大2名、千葉大3名など
  • 私立大:早慶31名(進学15名)、上理39名(進学15名)、ICU1名、MARCH159名(進学42名)

2年前には東大にも2名出しているようです。

卒業生に対する現役実進学者の割合も出ているので載せます。

中高一貫生だと少し上位の割合が上昇するようです。

ということで中学受験生で考えると、国公立+早慶上理+GMARCHで5割、これに医療系を加えると6割がこのどこかへ現役進学しているということになるので、それが受験生家庭からの評価を下支えしていると考えられます。内訳はともかくこの数字だけで見れば、四谷大塚偏差値で60くらいまで50台の学校と比べても遜色ない感じがします。高校から入る生徒より中高一貫生の方が結果がいいというのもポイント高いです。

とは言えいわゆる中堅校のポジションから上抜けできていないことも事実で、少子化を見据えた生き残り戦略の中で、今回の法人合併に至ったということだろうと思われます。

北里大学はどういう感じ?

さて今回のニュースですが、中学受験にはどのくらいのインパクトがあるんでしょうか。

まず大前提として、北里大学への推薦枠がどのくらいになるかが発表になっておらず、医学部への推薦枠があるかどうかもわからないので、何とも言えないというのが基本路線ではあります。ただ、附属として内部進学が開始と明言はされているので、ある程度の期待は織り込むことができると思います。

ということで、そもそも北里大学は大学受験ではどのくらいの難易度なのか気になるので、東進ハイスクールの偏差値表で見てみました。

偏差値学部同偏差値の他大学(私立理系)*
68医(医)早稲田(教育/先進理工等) / 明治(総合数理/理工他) / 大阪医科薬科(医) / 帝京(医) / 昭和(医) / 杏林(医) / 東邦(医) / 藤田医科(医)
63薬(生命創薬科) / 薬(薬)法政(デザイン工/理工) / 関西(システム理工他) / 立命館(生命科学他) / 工学院(工) / 東京電機(システムデザイン工) / 芝浦工業(建築/工)
62看護(看護)青山学院(理工) / 法政(生命科学他) / 立命館(理工他) / 学習院(理) / 工学院(建築/先進工) / 成蹊(理工) / 東京都市(デザイン・データ科他) / 芝浦工業(システム理工他)
60獣医(獣医)関西学院(生命環境/生命医科他) / 立命館(理工/薬) / 日本(理工/生物資源科
) / 中央(工) / 文教(健康栄養/教育) / 東京都市(理工) / 東京電機(工/理工) / 津田塾(学芸) / 芝浦工業(システム理工/工) / 順天堂(医療科/保健医療) / 麻布(獣医)
58理(化) / 理(生物科) / 理(物理) / 海洋生命科学(海洋生命科学)関西学院(理) / 日本(理工) / 近畿(農) / 同志社女子(薬/看護) / 名城(理工/薬/農) / 東京都市(建築都市デザイン/理工) / 藤田医科(医療科学/保健衛生)
57医療衛生 (5学科)日本(文理) / 近畿(建築/生物理工) / 南山(理工) / 名城(理工/情報工) / 大阪医科薬科(薬/看護) / 杏林(保険/保健) / 東京農業(生命科学) / 金沢工業(工)
51医療衛生 (2学科)東海(生物) / 金沢工業(バイオ・化/工)
50医療衛生 (1学科)北海学園(工)
48獣医(生物環境科)日本(生産工/生物資源科)
47医療衛生(リハビリテーション「視覚機能療法学」)日本(生産工/松戸歯/生物資源科)
45獣医(動物資料科)
出典:東進の大学入試偏差値一覧(ランキング)
*全ては書ききれないので2学科以上が入っている大学を挙げました(医学部を除く)

まず学部名を見ると、医学部をはじめとして基本的には医学や理学に関連した理系学科のみです。

偏差値はまあ医学部は別格として、それ以外だと大きなゾーンは57〜63の辺りと、45〜51辺りに分けられます。同偏差値の他大学を併記したので大体の目安にしてもらえればと思いますが、理学部で見るとMARCHよりちょっと下、という感じに見えます。偏差値51以下のところは、倍率がほぼ1倍とかになっているので偏差値がほとんど意味をなしていないゾーンだと思われます。

というわけで、学部学科によってかなり差が大きい感じがしますが、メインどころはそこそこの難易度にいそうです。理系学部については学べることが大学によって違うし、就職を考えても文系学部ほど偏差値で序列をつけるイメージにはならない気がするので、悪くないというか、十分検討に値するように個人的には思います。(あくまで主観ですが)

人気化してもおかしくない

まあぶっちゃけ、2年前の明治大学(日本学園)に比べればネームバリューとしてはやや地味に見えるのは否めませんが、医学部がある点だけでも注目度はあると思います。

私大医学部への推薦枠ということでは、2021年に獨協医科大学への推薦枠を発表した獨協中学が頭に浮かびます。獨協は2022年度から、獨協医科大学へ10名(獨協高校と獨協埼玉高校で合わせて10名)の系列校推薦枠ができると発表しました。実際に2022年度は6名が内部推薦で進学したとのことです。

順天は紆余曲折のあと共学化した学校、獨協は伝統の男子校ということで、学校のカラーはだいぶ違うと思いますが、医学部への推薦枠ができたことと、中学入試の偏差値は近いところにいたということで参考になるかもしれないと思い、比較してみることにしました。

まずは順天の偏差値を、四谷大塚80と首都圏模試80で出してみます。
ちなみに第1回は2月1日、第2回は2月2日で、共にAが午前入試、Bが午後入試です。

四谷大塚は本当に測っているのか?と疑いたくなるほど、ここ5年間は微動だにしていません。
首都圏模試の方はややビジーですが、2018年まではやや上昇していたもののその後はほぼ横ばいと見ていいでしょう。ちなみに第3回は特殊な試験なのとデータが揃わないので割愛します。

次に獨協を見ます。
ちなみに第1回は2月1日、第2回が2月1日午後、第3回が2月2日、第4回が2月4日です。

2015年辺りから数年間低迷していたのが、2021年から明らかに上昇に入っています。ちょうど2月1日午後入試(第2回入試)を開始したタイミングでもあり、推薦開始のアナウンスとの相乗効果もあってか、復活を遂げたと言っていいんじゃないでしょうか。

それぞれの偏差値の動きは異なりますが、近しい偏差値にいたことはわかると思います。そして2021年の発表をきっかけに、獨協は1ランク上の偏差値帯に入ったように見えます。ここからすれば、今回の順天に関しても似たような動きが起きてもおかしくないと考えられそうです。

推薦がどの程度になるのか、学校がどういう方向性にいくのかによって大きく変わってくるとは思いますが、中堅校によくあるような、推薦権を保持した上で他大学受験を目指すという半進学校的な制度ができると非常に面白いことになりそうです。現在の進学校としての教育体制は維持するようなので、その上に大学推薦枠を付けるのであればプラスしかない気がします。北里大学が医学を中心とした理系大学であることを考えると、昨今の理系学部人気から考えても、もっと大きな人気化の可能性もあると思います。いずれにせよ、しばらくは注目して追いかけてみたい感じです。

まとめ

ということで順天中学校・高等学校の法人合併のニュースについてでした。

最近は中高一貫校と大学との提携のニュースが多くなっていますが、その中でも法人合併という比較的大きな動きで、内容も面白いと思ったので取り上げてみました。

模試の動向を見ていると、どうやら中学受験者数は2023年(昨年度)でピークをつけ、今年はほぼ横ばい、そして来年からはついに減少に向かいそうな情勢が見えてきました。受験率は増加する一方で、子供の絶対数は下がり続けているので、コロナ禍で2年ぐらい後ズレした感がありますがついに減少に転じそうです。大学受験の方は既に全入時代に突入しているので、青田買い的に中高を系列化する動きが活発になってきています。

今回のニュースも間違いなくそういう動きの中のひとつでしょうが、実際に中学受験者数が減少をはじめる来年からはさらに空気感が変わるかもしれません。中学受験が売り手市場から買い手市場に変わったときに何が起きるのか、個人的には非常に興味があります。

今後もこういったニュースにはアンテナを立て、考察した上でお伝えしていこうと思いますので引き続きご覧ください。

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